「理系脳」の子ども、文系も得意になれる? その逆は??※写真はイメージ

子どもが小学校に入学し、同じように国語・算数・理科・社会と勉強しているはずなのに、いつの間にかテストの点数に差が開き、得意科目、苦手科目が明確になってくる。理系科目が得意な子どもは、文系科目が苦手なケースが多く、その逆もしかり。不得意な科目を少しでも得意に近づける方法はあるのだろうか?

中学受験のエキスパートとして、毎年多くの小学生を志望校合格へ導いている「個別指導教室 SS-1」代表の小川大介先生に話を聞いた。

「理系脳」と「文系脳」に分けることは無意味

小川先生は「大前提として、子どもの能力は理系脳と文系脳の2つには分けられません」と言う。だが、子どもによって好む考え方が違う場合があるとは、感じているそうだ。

先生の定義によると、理系的な考え方とは「不要な情報を削って優先度の高い情報を選び、最も密度の濃い言葉ともいえる"数字"にまとめる考え方」。一方文系的な考え方は「物事を具体的にとらえ、関係する情報を集め、想像して膨らませ、頭の中の引き出しに情報をストックして使う考え方」と捉えられるという。

「『理系』と『文系』に分けることは、子どもの可能性を捨ててしまうことになりかねない」と小川先生。それよりも、子どものことをよく観察し、どういう考え方や学習が好きなのか、注目することが大事なのだという。

国語の読解問題や状況説明が苦手な子どもへの対策は?

なぜ得意科目と不得意科目ができるのか。それは、子どもに「好きなことを集中してやり続ける」という特性があるからだそうだ。理系的な考え方が好きな子どもは当然、理系科目が得意になりやすいと考えられる。

そのため、理系的な考え方が好きな子どもに、文系的な考え方も身に付けてもらうには、「子どもが好きな科目に似たアプローチに変えてみるのも手」と小川先生。算数の問題を解くのは大好きだが、国語の読解問題や相手に伝わる話し方が苦手な子どもには、まず、「計算のどういうところがおもしろい?」と、尋ねてみるといいのだとか。

「計算は答えが思った通りにピッタリ当たるのがおもしろい」という子には、日常生活の中で「お母さんが質問したら、1回で"なるほど"と納得できるように、ピッタリ答えて」とお願いする。そうすると、相手に伝わる話し方を考えることが、楽しくなる。

さらに、例えば「どこへ行くの?」というような質問をする場合は、事前に「誰と、どこで、何をして、何時に帰る」という4つの要素を答えてくれれば、何度も質問しないで1回で済むことを、伝えておくと効果的だそうだ。

早速筆者も、理系的な考え方が好きな息子に試してみたところ、「いいよ、分かった!」とおもしろがった。これまでは、「どこ行くの?」という質問に「公園」とだけ答え、「誰と?」「何時に帰るの?」と重ねて質問する必要があったが、驚いたことにその日から、知りたい4つの要素を1回で答えてくれるようになった。

計算が苦手な子どもには、数字の意味を実感させる

それでは反対に、算数、中でも計算が苦手な子どもは、どのように導いてあげるといいのだろうか。小川先生は、「本来数字とは、生活の中のことを誰でも分かる記号に置き換えたもの。生活や体験に重ねながら、数字の意味を実感させることが大切」と語った。

例えば、子どもが「5+4=11」と間違えたときは、まず「5個の丸」と「4個の丸」を絵に描いてもらう。そして、「4個の丸は5個の丸より1つ少ないね」「5と4を合わせたら、10より大きくなるかな?」と導いていく。この後、似たような問題を3つほど出してあげれば、数字の意味が理解しやすくなるそうだ。

小川先生によれば、幼稚園や小学校低学年のうちから計算ドリルを多く与え、暗記させようとすると、考え方を応用する力が身に付かず、かえって算数が苦手になるケースもあるという。

子どもの学習意欲が高まるポイントを探すのは、難しいかもしれないが、経営者や起業家の伝記で出てくる子ども時代のエピソードなどにも、子どもを理解する材料があるそうだ。わが子と似ている幼少時代を持つ人がいれば、将来のヒントになるかもしれない。子どもが生き生きとしている時をよく観察して、尊重しながら、苦手なことを手助けする方法を考えてみよう。


小川大介先生 プロフィール

「中学受験専門 個別指導教室 SS-1」代表。1973年生。京都大学法学部卒業。大学在学中より大手進学塾で受験国語の指導を開始し、最難関の灘中コースを担当。2000年より関西、東京に「個別指導教室 SS-1」を展開。コーチング技術や心理療法的なアプローチを取り入れた指導に定評がある。最新著書『もう悩まない中学受験』の他、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』、『中学受験基本のキ!』など著書多数。