赤ちゃんは泣く。それは赤ちゃんであれば当然のことだが、あまりに泣かれるとパパやママは「なんで!? 」という思いにかられ、イライラしてしまうこともあるだろう。そして泣きやますことのできない自分に対して負の感情を抱く場合もあるかもしれない。そんな、赤ちゃんが泣いている時に"気を付けたいこと"や"対処法"はあるのだろうか。助産師や保育士、臨床心理士などの専門職により構成された母子支援チーム「Newborn Family サポート協会」のメンバーにうかがった。

「なんで泣いているのか分からない……」それが辛いというパパ・ママは多い

赤ちゃんの表現方法は限られている。「笑う・泣く」あたりがそのほとんどだろう。なかでも何かを強く主張したい時には「泣く」が、赤ちゃんにとって最も有効な手段となる。親としてはこの「泣く」から何をうったえているのかを探るしかないのだが、赤ちゃんの求めるものになかなか到達できないこともしばしば。協会のメンバーによると、そんな時に押さえておきたいポイントがいくつかあるという。

まずは赤ちゃんの体調を確認

「おなかがすいた」「おむつが濡れている」「眠い」など、さまざま要求を泣くことで伝えようとする赤ちゃん。いつもの泣き方と違って、火がついたように泣いている時などは、全身の状態、また、周囲の環境なども細かく観察する必要があると協会の代表で助産師の城所眞紀子さんは語る。

しかし、泣いている時は「まだ泣くだけの元気がある」ということ。逆に、「泣けない」時の方が赤ちゃんの体調が悪い場合もある。赤ちゃんは状態が急変するのも早く、知らぬ間に重症化していることもあり得るため、注意が必要だ。

同じく協会メンバーの助産師・石田かおりさんは、「やけに静かすぎるのも怖い。おなかがすいているはずなのにミルクを飲まないのも危険なサインです。脱水しすぎて汗をかけなくなっていることもあります」と言う。重症になる前に、"いつもと何かが違う"と、気付けることが大事だ。

赤ちゃんがどんな泣き方をしているのかに気をつけよう

しかし、異変に気付いた時にはどうすればいいのだろうか。救急車を呼ぶべきか迷う場面もあるだろう。そんな時は、住んでいる自治体の相談ダイヤルを活用したい。何かが起こる前に確認しておき、携帯電話に登録しておこう。"相談できる場所がある"と知っているだけでも安心でき、冷静な行動につながるだろう。

赤ちゃんも泣きたい時がある

しかし、「おなかはいっぱいだし、おむつも替えたし、体調も悪くなさそうなのに、なんで泣きやまないの!? 」ということも多いだろう。石田さんは、「赤ちゃんは、ただ感情を発散したいために泣いていることもあります」と言う。

大人でも、叫んでみたくなったり、何となくイライラしてパートナーに当たってしまったりすることもあるだろう。言葉で表現できない赤ちゃんなら、なおさら発散したいものはあるかもしれない。赤ちゃんだって人であるからには、いろいろ思うところもあるだろう。「泣きたい時もあるよね、泣いてもいいよ」と、それに付き合ってあげる気持ちでいるといいそうだ。

自分も大切に

ところが、赤ちゃんの泣きに付き合ってあげようと頭では思っていても、どうしようもない気分になることもある。イライラして、自分を冷静にコントロールできなくなっているのを感じたことがある人も多いのではないだろうか。

自分の不安やイライラが赤ちゃんに伝わることも。ひとりで溜め込まないように

そんな時は、通常よりも鳴き声に敏感になっているという。実は、赤ちゃんとパパ・ママは以心伝心の間柄である。赤ちゃんは親のイライラを感じて更に泣き、泣き叫ぶ赤ちゃんを抱く親もなおのこと「キー! 」となり……という悪循環になってしまう。

保育士で一児の母でもある白川さなえさんは、「まずは深呼吸。誰かに助けてもらい、1時間だけでも赤ちゃんから離れてみるのもひとつの手。そうすると、赤ちゃんも自分も、お互いに気持ちがおさまることがあります」と言う。自分の両親にお願いしたり、一時保育を利用するなど、少し離れられる時間を作るのも大事なのだそうだ。

また白川さんは、「赤ちゃんを泣かせておくことをネグレクト(育児放棄)のように思ってしまい、一生懸命にがんばりすぎる方がいます。自分も赤ちゃんも、どちらも人間。お互いに尊重していくことが大切です」と語る。

最近では、育児の悩みをひとりで抱え込んでしまう人が多いという。「悩みを誰かと共有すると、気持ちが落ち着きます。話ができる仲間を探してみては」と城所さんは言う。赤ちゃんの気持ちを考えると同時に、自分がホッと落ち着ける時間をつくることが大切なようだ。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

プロフィール: Newborn Family サポート協会

専門職(助産師・看護師・臨床心理士・栄養士・歯科衛生士・整体師・保育士・ドゥーラ等)により構成された母子支援チーム。「Fami Liko」を通じて、会員制サポートのprimary care部門・有償ボランティア団体を併設したwelfare部門の二本柱で家族の状況に合わせた、より個別的なニーズに応ずる柔軟な体制を基盤にサポートを提供している。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスにつづったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。