薄毛は男性のみならず、女性にとってもコンプレックスとなりうる。毛髪がなくなっていくことの一因として、「加齢に伴う女性ホルモンの減少」はよく知られている。
同じように、ストレスも髪が抜ける(薄くなる)原因であるという話を聞いた経験はないだろうか。会社の同僚や上司、同居する家族、近隣住民……。私たちの身の回りにはストレスになりうる対象があふれている。生きていくうえでストレスをゼロにすることはほぼ不可能なのだが、このストレスは本当に髪に影響を与えているのだろうか。
今回は、AACクリニック銀座の院長・浜中聡子医師に「精神面と女性の脱毛の関係性」についてうかがった。
ストレスは髪の加齢変化に影響
女性の場合、一般的に20代後半をピークに減少する女性ホルモンが髪と深く関わっている。エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが減ることによって髪が細くなり、ハリやコシもなくなってくる。また、髪がうねったり、乾燥したりといった症状にも悩まされるようになる。
一方で、私たちはストレスを抱えると頭痛を伴ったり、アレルギー症状が出たり、便秘になったりとあらゆる症状に悩まされるようになる。そしてやはり、ストレスは薄毛や脱毛にも関与していると浜中医師は解説する。
「ストレスは、免疫力をはじめとするさまざまな部分に影響を及ぼすものなので、当然、髪の毛の加齢変化にも影響が出てきます。ストレスが要因となり、女性ホルモンのバランスがくずれることもあります」
とりわけ、就業時間が不規則な介護福祉士や看護師といった医療従事者や、残業の多いSEなどの職業はストレスがたまりやすい。こういった職種に就いている、もしくは過労気味の女性は自身の女性ホルモンに注意したいところだ。
ホルモンが先か、ストレスが先か
「鶏が先か、卵が先か」ではないが、ストレスが原因で女性ホルモンが減ることもあるし、女性ホルモンの量が減少してイライラがつのり、ストレスとなりうるケースもある。
どちらの要因も繊細な女性のメンタル面に大きな変化を招くが、ストレスと違い、女性ホルモンはまだ自身でコントロールできる余地がある。そのため、「女性ホルモンの量が減少しており、同時に何か別のストレスを抱えている」という最悪の状況の場合、まずはホルモンの対策を講じるべきだと浜中医師は指摘する。
「ストレスはなくそうと思ってもなくせるものではありません。皆さん、『ストレス要因をなんとかしたい』とお考えですが、ストレスの対象が人ならばその人をコントロールするのは無理です。まず、物理的もしくは心的に距離をとりましょう。ストレスの対象から離れることで、やっと楽になります。一方で、女性ホルモンの方のケアは早めにするといいですね」
女性ホルモンの低下が原因の抜け毛や薄毛といったトラブルを抱えた場合、頭髪治療と並行してホルモン補充療法などで対策をすることも可能だ。残念なことに女性ホルモンがヘアトラブルの原因なのか、それともストレスなどの他の要因が関係しているのかを、血液検査などをすることなく正確に見分けるのは難しいのが現状ではある。
それでも、例えば急に抜け毛が目立つようになった場合、生理不順など他の女性ホルモンに起因するような症状が出ていたら、ホルモンバランスの乱れが招いた脱毛の可能性もある。大切なのは、ストレスが原因か否かを見極めるため、ストレスによる負荷がかかったときにいつも出る心身の反応を、自分で把握しておくことなのだ。
※写真と本文は関係ありません
記事監修: 浜中聡子(はまなか さとこ)
医学博士。北里大学医学部卒業。AACクリニック銀座院長。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医などの資格を多数取得。アンチエイジングと精神神経学の専門家で、常に丁寧な診察で患者に接する。