2016年11月から12月にかけて劇場公開された『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』が、オンライン映像配信サービス・Netflixにて現在、独占配信されている。Netflixは米国発の映像配信サービスであり、業界でのシェアは世界1位だ。
本作は漫画家・石ノ森章太郎氏の代表作で、これまでに何度もTVアニメ化や劇場アニメ化がされてきた人気作品『サイボーグ009』が原作。近年では神山健治監督による『009 RE:CYBORG』が2012年に公開されており、本作は事実上、その続編にあたる立ち位置の作品となっている。ただし、物語としては独立しており、『009 RE:CYBORG』を先に見ていなくても全く問題はない。
今回、Netflixでの独占配信が開始されることを機に、本作の監督を務めた柿本広大氏と、主人公である009/島村ジョー役の声優・河本啓佑氏に話を伺うことができた。
『サイボーグ009』という偉大な人気シリーズを手がけるにあたって、2人はどんな気持ちで制作に臨んだのか。劇場版の反響を受けてどんな思いを抱いているのか。そしてNetflixの配信に何を期待するか。今だから話せる本音を聞かせてもらった。
人気シリーズを前にした声優と監督、それぞれの心持ち
――『サイボーグ009』は、もう50年も続く歴史あるアニメです。どんな心境で制作に臨まれたのでしょうか。
柿本監督:おっしゃる通り、『サイボーグ009』はそれこそうちの父親でも知っている作品です。僕も名前だけは小さい頃から知っていましたし、高校くらいには原作も読んだことがあって大好きな作品です。ファンの方も僕の父親世代から若い方まで幅広く、そういう意味では緊張して今回のお話を受けさせていただきました。
――柿本監督は神山(健治)監督の『009 RE:CYBORG』にも演出として関わっていらっしゃいますよね。
柿本監督:はい。『009 RE:CYBORG』のときもまさか自分がという思いでしたが、今回はさらに監督ということですから……本当にいいのかなと(笑)。
――河本さんはいかがですか? 島村ジョーはこれまで数々の声優さんが演じてこられた役です。
河本:もともと『サイボーグ009』に関するオーディションを受けたのは、『サイボーグ009VSデビルマン』*が最初だったんです。それは落ちてしまったのですが、またすぐに次の『サイボーグ009』のオーディションがあることを聞いて、しかも次は島村ジョー役で受けさせていただいて本当に光栄でした。
受かったと聞いたときは、まさかという気持ちでしたね。本当ですか、いいんですかと。これから「島村ジョー役の河本啓佑です」と名乗っていいんだなって。それと同時にプレッシャーもありましたね。偉大な先輩方が築き上げてきたものを良い形で残しつつも、プラスアルファで僕たちの良さを盛り込めたらと思いました。
*『サイボーグ009VSデビルマン』:2015年10月、イベント上映という形で2週間限定で公開されたアニメ作品。
シリーズの核は「チームワーク」
――『サイボーグ009』はシリーズによって作品としての色が全然違いますよね。監督も自身の個性を出そうという思いがあったのでしょうか。
柿本監督:個性を出そうというよりは、原作やTVシリーズの大きな流れを踏襲しようという思いがまずありました。例えば島村ジョーだったら、少し影のあるアンニュイなヒーロー、そういうところからもう一度掘り出していきたいなと。『サイボーグ009』がこれだけ多岐にわたる作品群があるのに、一本筋が通っているのはどこなんだろうと。神山さんもそういう思いを持たれていたので、今回一緒にやらせていただいたということです。
――『サイボーグ009』の軸とは?
柿本監督:チームワークですね。個々が個性的なので、誰が描いても例えば007は007にちゃんとなるんですよ。そういう個性がありながらも、全員がギルモア博士を中心としたチームを作り、チームのことを考えて行動する。個を出しながらも、チームワークがあるというところは、どの作品を見ても必ず見える部分なんです。
河本:一人ひとりの特殊能力は強力ですが、敵側も強いんですよね。個々のメンバーでは勝てない部分もあり、補い合って倒していく。チームワークなしでは勝てないストーリーになっているところがすばらしいと思います。
――今回は冒頭からこれぞチームワークという戦いを見せてくれます。
河本:そうなんです。今回から入った方もわかりやすいと思いますね。今までも彼らはこうやって戦ってきたんだろうなと思ってもらえるといいですね。
柿本監督:欲を言えば、今回を見たことで過去作も見たいなと思ってほしいですね。
――冒頭には過去の出来事を振り返る印象的なシーンがありました。あそこだけタッチが古めかしく作られていますよね。まるで昭和のアニメのような。
柿本監督:実はあのシーンは、「原作の絵そのままで作ってみては」というアイデアがあったんです。実際に作ってみたのですが、さすがに1本通して見ると同じ作品に見えなくて今のモデルで作り直してもらいました(笑)。