言わずと知れた高級食材「松阪牛」。とろけるような脂の甘み、肉質の柔らかさ……を味わうためには、大枚をはたく必要があるが、松阪牛のふるさと・三重県松阪の人たちは、そのおいしさを"ホルモン焼き"という形で気軽に楽しんでいる。

市内には、ホルモンを提供する店が数多くあり、中でも昭和26(1951)年創業の「元祖ホルモン脇田屋本店」は、"元祖"と冠がつくほどの老舗中の老舗。本当は教えたくない、ホルモン以外の特別メニューもこっそり用意されている。早速紹介しよう!

"ふわっじゅわ~"な松阪ホルモンを召し上がれ

ふわっふわの甘い脂を赤味噌のタレで食す

地元では、松阪牛の品質が上がるにつれて食べられるようになったというホルモン。「終戦後、豚の内臓を食べる文化はあったが、徐々に牛の内臓を食べる文化も広がった」と語るのは、2代目の脇田民三さんだ。いまや松阪牛の認定基準は、当時に比べて厳しくなり、頭数も減少。もちろんホルモンを食すことができる場所も、限られてきているという。

秘伝の赤味噌ダレをたっぷりつけた「ホルモン」(650円)。七輪で焼き上げたあと、さらにもう一度タレをつけて食すのが醍醐味だ

同店の「ホルモン」(650円)は、赤センマイ、ヒモ、中ミノ、シマチョウ、キモなど、5種類ほどの内臓肉が入った一品。秘伝の赤味噌ダレがたっぷりかかった状態で出てきたホルモンを(タレなしも注文可能)、炭火焼の七輪の上にのせると、早速モクモクと煙が上がり、食欲をそそる香りがただよってくる。

人気部位の「ヒモ」は脂が甘く柔らかい

ホルモンの中でも、人気なのは「ヒモ」と呼ばれる部位。「小腸を縦に割って開き、中の汚れを掃除して提供しています」(脇田さん)というように、小腸を横に切った形で提供する"マルチョウ"とは形状が一味違う。

表面に見えているのは、小腸の内側にあたる脂の部分だ。口に入れると、予想以上のふわっふわな食感に驚く。そして、かみ締めると脂の甘みがじゅわ~っと広がっていく。しかも脂にしつこくさはなく、少しすると、さーっと口の中で溶けていってしまう。

ホルモンのお供はやっぱりビール。店では地元の人たちが、七輪を囲んで一杯やっていた。まさに、松阪のソウルフードなのだ。

この日はプレミアムフライデー。職場の人たちで訪れたという

ただし、ほっかほかのご飯にたっぷりとホルモンとタレをかけ、かきこむのもまた良し。お好みで楽しんでいただきたい。

ご飯にかけて食べると……至福の時が訪れる

これまでのタンは何だったのか……予想を超えてくる肉厚特上タン

さらにこの店、ホルモン以外のメニューもあなどれない。3代目の脇田侑さんが「もうけは度外視しています。予約はできないので早い者勝ちです」とお勧めしてくれたのは、「松阪牛特上タン」(1,600円)。これでもか! とサシが入った希少なタンを厚めに切り出したぜいたくな一品だ。

ボリュームも肉質もピカイチな「松阪牛特上タン」(1,600円)

七輪で焼き上げたタンは、こちらも脂の甘みがたっぷりと口の中に広がる、至福の味わい。これまで食べてきたタンは、一体何だったのか……と考えてしまうほど、その肉質の柔らかさにも、うっとりしてしまう。

脂の質と肉の柔らかさが際立つ

店では他にも、「松阪牛特上ロース」(2,300円)や「特ロース」(1,500円)、「上カルビ」(1,000円)など、ホルモン以外のメニューが充実している。またホルモンも、それぞれの部位を単品で頼むことができ、客の好みでさまざまなバリエーションが楽しめるだろう。

「元祖ホルモン脇田屋本店」

煙が広がる店内では、服装に注意(ただし、排煙装置が備えられた席もあり)。ホルモン焼きのおいしいにおいと味わいに包まれる松阪の夜を、ぜひ楽しんでいただきたい。

●information
元祖ホルモン脇田屋本店
住所: 三重県松阪市長月町12
アクセス: 松阪駅から徒歩15分
営業時間: 11~22時
定休日: 月曜日※祝日の場合は翌火曜日

※記事中の情報・価格は2017年2月取材時のもの。価格は税込