アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』(4月7日公開)の完成披露上映会が9日に都内で行われ、舞台あいさつに声優・花澤香菜らが登壇し作品の見どころや役作りの裏側などを語った。
本作は、第20回山本周五郎賞受賞および2007年本屋大賞2位に選ばれ、累計売り上げ120万部を超えた森見登美彦氏の同名の青春小説が原作。舞台は京都で、さえない大学生の"先輩"と彼が思いを寄せる"黒髪の乙女"、そして2人を取り巻く人々の淡い恋模様がファンタジックに描かれる。メガホンを取るのは、同じ森見氏の作品をもとにした『四畳半神話大系』(2010年)を手がけてきた湯浅政明監督。キャラクター原案も同作に参加したイラストレーター・中村佑介氏が担当している。
舞台あいさつに登場したのは"黒髪の乙女"役の花澤のほか、"先輩"役の星野源と学園祭事務局長役の神谷浩史、パンツ総番長役のロバート・秋山竜次、湯浅監督の5人。大学時代に原作を読んでいたという花澤は、オファーを受けた際に「この作品において"乙女"は重要。いろんな"乙女"像が読者の中にある分、責任重大だな」と身構える部分もあったというが、今では「演じられたことがとってもうれしかった」と笑顔を見せた。
アフレコの際にトップバッターを務めることになった花澤は、そんな"乙女"を演じるにあたって原作で抱いたイメージから「天真らんまんで天然な感じ、ふわふわした感じかなと(役を)作っていった」。しかし、ディレクションの段階で「武士道をたたき込まれた女の子だからもうちょっと武士(のような感じ)で」と要望があったことから、「最初に作ったものよりは落ち着いた感じになりましたね」と録っていく過程で、"乙女"にチューニングを合わせていったことを明かした。
他のキャストの収録も終え、完成した作品を見た上での思いを問われると、「もう最高です!」と大感激。声を震わせるように「なんでしょうね……とっても濃い味のものを、でもすっごいおいしい"やつ"を食べているって感じ」と力強くアピールするも、星野から「"やつ"って! 最後だけいきなり雑になっちゃってません!?」とツッコミを受ける一幕もあった。
終盤では"乙女"たちのミュージカルシーンも披露される本作。花澤は、一番初めの録音になったことから「どうしたものか!」と戸惑いつつも、「多分"乙女"は思いきり(ミュージカルを)演じるんだろうなと思って」自身も体当たりで演じたという。一方、星野は「最初は勇ましく歌っているんですけど、"先輩"が急に来るとちょっとしおらしい歌声に変わるんです」と分析。続けて、「少しだけ"先輩"を意識しているのか、それまでミュージカル的な歌い方から普通の歌声になるんです。その歌い分けがとてもすてきで、すごく好きです」と絶賛した。
最後に花澤は、「私は『昨日何してた?』って聞かれると、何もしてなかったと答える日も割と多くて……」と前置きしつつ、本作は「(一日を)そういう日にしたくないなと思わせる作品」とコメント。さらに「"乙女"のように人生を楽しめるような時間の遣い方をしたら、もっともっといろんなことが広がって、楽しく過ごせるってことを気付かせてくれる映画だなと思います」と言葉を重ね、「掘り下げるとキャラクターの面白い部分もいっぱい出てくると思うので、ぜひ何度でも見ていただけたらと思います」と呼びかけ上映会での舞台あいさつを終えた。