国際航空運送協会(IATA) の事務総長兼CEOであるアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック氏は、このほど来日し、2020年東京オリンピック開催および観光業界のさらなる成長に向けて、日本に対し広い視野での考察と業界全体での広範な協議を通じ、航空インフラ整備の必要性を強調した。

IATAの事務総長兼CEOは、「時代に逆行して利用料を上げている羽田空港については、まだ課題が残されています」とコメント

2016年の訪日外国人旅行者はおよそ2,400万人を記録。オリンピック開催年である2020年には、日本は4,000万人の訪日外国人旅行者を想定しており、 およそ700億ドル(約8兆円)の経済効果を見込んでいる。 そして、2030年には6,000万人の訪日外国人旅行者と1,300億ドル(15兆円)の経済効果を目標に掲げている。

IATAの事務総長兼CEOであるアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック氏は、「つい最近まで日本の空港は、最も空港利用料の高い空港でした。今日では、安いとは言えないものの、関西空港と成田空港については、これまで最も費用の高い10の空港に入っていましたが、それぞれ13位と23位にまで順位を下げました。あるべき方向に向かっていると言えますが、とりわけ時代に逆行して利用料を上げている羽田空港については、まだ課題が残されています」とコメントしている。

成長に向けた準備を整えるために、IATAは日本の航空インフラの競争力を更に高めるための総括的な計画の立案を推奨している。

関西空港に日本で初めてスマート・セキュリティを導入

ひとつは、2017年1月に関西空港において日本で初めて導入されたスマート・セキュリティに関して。セキュリティ・システムがより効率的になったことにより、搭乗客の顧客満足度が改善されたことを踏まえ、ドゥ・ジュニアック氏は2020年の東京オリンピック開催に合わせて、日本がスマート・セキュリティ導入のモデルとなることを推奨している。

ふたつ目はターミナルの効率化に関して。東京オリンピック開催前にターミナルの効率化を最大化するべく、IATAは日本の空港に対し、訪日客が利用できるモバイル搭乗券、自動チェックイン機(KIOSK)、自宅で印刷できる手荷物タグの導入を優先することを推奨している。

3つ目は空域の効率化に関して。IATAは、空域のキャパシティを2倍にするという約束を実行するため、CARATS(将来の航空交通システムに関する長期ビジョン)の支援を表明。空域は東京に特有の制約であり、IATAは東京都心部上空の空域を広げることで混雑を緩和するよう政府に要請している。

関西空港や成田空港に続くLCCターミナルに関して、「まずは現行の設備で最大限にキャパシティを高めるべき」と主張

4つ目はターミナルの低コスト化に関して。関西空港および成田空港における「LCCターミナル」の実現を通じて、IATAは重要なキャパシティが強化されるはずだと認識しているものの、将来の開発に対する費用対効果にも懸念を示している。そのためドゥ・ジュニアック氏は、「まずは現行の設備で最大限にキャパシティを高めるべきだと考えます。そしてターミナルを建造する前に、適切なコスト配分および旅客と長期的に良好な関係を築くことが必要不可欠となります」とコメントしている。

最後に、羽田空港と成田空港の役割調整に関して。需要に沿ってうまく調整を行い、明確な将来の展望のもとにキャパシティを発展させるために、日本の首都における2つの空港、羽田空港と成田空港の役割を長期的視点から明確にする必要があるとしている。

ドゥ・ジュニアック氏は、「オリンピックは大きな節目であり、必要な改善策を実行するきっかけとなります。しかしそれはあくまで、毎年日本へ6,000万人の訪日外国人旅行者を呼び込むという大きな目的に焦点を当て、長期的かつ広範な視点から練られた計画の中のプロセスの一部分として行うことが不可欠です。そして日本のビジネスおよび日本人と世界とのつながりを効率的に保ち続けることが求められます」とコメントしている。