進学や就職など春から一人暮らしを始める方にとっては、部屋探しに本腰を入れる頃です。物件情報を見るときに家賃や間取りなどは誰しもしっかり確認すると思いますが、条件以外にも注目してほしいのが「取引態様」です。聞きなれない言葉かもしれませんが、ここに部屋探しをスムーズに進めるポイントがあります。
「取引態様」って何?
誰もがイメージする部屋探しの段取りといえば、まず不動産会社とやりとりをして、気に入った部屋を探し、契約をして借りるというのが一般的です。でも、そもそもその物件を持っているのは不動産会社ではなく、大家さん(貸主)です(不動産会社が大家さんという場合もあります)。取引態様は、不動産会社がその物件に対し、どんな立場で取引をしているのかを示しています。
これは物件情報に必ず記載しなければならないと定められている事項です。物件検索サイトなどの情報では下に何度もスクロールした先に小さく書かれていることが多いので、目にしない人も多いかもしれませんが、部屋探しをする上で重要な情報です。
「仲介」「代理」「媒介」「貸主」とは?
不動産会社が出している物件ページの取引様態を見ると、「貸主」「代理」「仲介」「専任(媒介)」「一般(媒介)」といった言葉が書かれています。でも、これだけでは意味がわからないという人も多いはず。
まず「貸主」というのは、物件の所有者であるということ。つまり、その不動産会社が持っている物件だとわかります。
また、「代理」とは、貸主の代理であるということ。所有者ではありませんが、貸主の代わりに物件を貸し出しているため、条件の交渉などを直接することができます。ただし、これらの取引様態の物件はあまり多くありません。
多いのは「仲介」と「媒介」。このふたつの言葉は同じ意味ですが、「専任媒介(「専任」とのみ書かれることもある)」の場合は、その不動産会社のみが扱っている物件ということを示しています。直接大家さんから依頼を受けて、物件を紹介しているので、貸主や物件についての情報を多く持っています。
一方、「仲介」や「一般媒介」というのは、大家さんが複数の不動産会社に募集を依頼している物件ということ。そのため、同じ物件の情報をいろいろな不動産会社が紹介していることがあります。
「専任」の不動産会社を選んだ方がいいの?
「じゃあ、詳しく知っている専任の不動産会社を選んだ方がいいのでは?」と思うかもしれませんが、専任、仲介ともにメリット・デメリットはそれぞれです。
専任媒介の不動産会社は物件情報に詳しいけれど、自社の扱う物件ばかり強く勧めてくる場合があります。一方で、仲介は物件について詳しい情報が聞き出せない場合もありますが、より中立な立場で借りる側の求める条件に合った部屋を紹介してもらえることがあります。
「自分の住む物件をよく知っておきたいから、専任の不動産会社に当たってみよう」「時間がないから、一度にいろんな部屋を紹介してもらえるよう仲介の不動産会社にお願いしよう」というように、不動産会社を使い分けることで、よりスムーズに部屋探しをすることができるでしょう。
暮らしスタイリスト・一人暮らしアドバイザー:河野真希
ウェブや雑誌など各種メディアで、料理や家事、インテリアなど、気持ちのいい暮らしを目指すライフスタイルを提案。著書に『ひとり暮らしの季節ごよみ』(祥伝社)、監修本に『家事のお手本-大人のたしなみ賢いくらし』(泉書房)『頑張らなくても素敵に暮らせる「夜だけ家事」で快適シンプル生活』(双葉社)などがある。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。