ダイソンは、LEDの冷却システムを内蔵し、アップライトとダウンライトを一体化させたオフィス用照明器具「Cu-Beam Duo」を発表。3月6日に、都内で報道関係者向けの説明会を開催した。
新製品は、天井吊り下げ型(サスペンド型)のLED照明器具。ダイソン創業者 ジェイムズ・ダイソン氏の長男で、取締役兼チーフエンジニアを務めるジェイク・ダイソン氏は、「現在のオフィス向けの照明器具は30年以上前からあまり進歩がなく、そもそも選択肢が少ない」と話しており、今回のCu-Beam Duoは"オフィス向け照明器具"という新たな市場を切り開くべく開発したという。
オフィス向け照明は、埋め込み型のスポットライトや蛍光灯など異なる光源を組み合わせた環境が主流で、ジェイムズ・ダイソン氏はそういった状況を「非効率であるだけでなく、ストレスなど健康面でも悪影響を及ぼしかねない」と受け止めている。そういった意味でも、Cu-Beam Duoはオフィス照明に関わるいくつもの課題解決に挑む製品だ。
Cu-Beam Duoは、上方向と下方向に同時に光を照射する機能を持つ。さらに独自開発のドライバーにより、上下それぞれの光量の配分を振り分けることも可能だ。たとえば、プレゼンテーションの場合には、上向きの光を70%、下向きの光を30%に調節してスクリーンを見やすくしたり、会議の際には下向き60%、上向き40%と直下のテーブルを明るめに照らすというように、利用シーンや状況に応じて柔軟な調整を行うことで、最適な照明環境を整える。
利用シーンに合わせた照明パターンの一例。天井に向けて光を照射するアップライトは全体的に明るくする効果があり、ダウンライトはタスクスペースを集中的に照らすのに適した照明。Cu-Beam Duoならシーンに応じて使い分けられる |
10年以上にわたって照明技術の研究・開発に従事してきたジェイク・ダイソン氏は「照明は適切な方向に照射すべき」と話す。そして、「必要な範囲に光を向けることは、最適な視覚的条件をもたらし、光の浪費を防ぐとともに眼精疲労も抑えられる」とメリットを強調する。
Cu-Beam Duoは、光の量を効率化する技術も導入されている。「Ricochet (リコシェ)テクノロジー」と名付けたもので、ワンタッチで調整できるシャッターと反射面から成り、シャッターの開閉により無駄な光の漏れを抑える。具体的にはシャッターを閉じることで、ダウンライトで使用しない光を上方に反射してアップライト側に向け、シャッターを開けると下方向に光を集中させて、光の量を最大限に活用した発光効率を発揮する。
また、2013年に発表したLEDデスク照明「CSYS」(シーシス)で採用された「ヒートパイプテクノロジー」も用いられている。中に水滴(作動液)が入った6本の真空造型管を内蔵し、照明のスイッチが入ると、LEDの発する熱がこれらを蒸気に変え、圧力差により管内を移動することで熱を逃すという仕組みだ。その後、蒸気は管内の冷たい部分に到達するとすぐに水に戻り、毛細管現象によってふたたびLED側へ戻って、冷却サイクルが繰り返される。
LED照明の寿命は約4万時間というのが通説だが、ジェイク・ダイソン氏は「それはLEDの冷却が行われていないから。LED照明の寿命はもっと長くできる」と話し、新製品もCSYSと同様に18万時間の寿命をうたう。
この冷却システムにより、高出力のLEDが利用できることから、光源がひとつであることも特徴だ。これに、光学的に計算された独特な形状のレンズを組み合わせて光を無駄なく適切な方向に拡散できる。
Cu-Beam Duoは、建築家や設計士といった建築関係者による提案や、ショールーム・展示スペース等を通じて販路を広げていきたいとのこと。また、アップライト、ダウンライトの機能にそれぞれ特化した「Cu-Beam up-light」「Cu-Beam down-light」も展開する。