映画監督に、出演役者の印象を伺っていく「監督は語る」シリーズ。今回とりあげるのは、小出恵介(33)だ。慶應義塾大学在学中に芸能界入りし、2005年には映画『パッチギ!』出演で注目を集めた。

その後、映画『リンダ リンダ リンダ』(05)、『キサラギ』(07)など数々の作品で実力を高く評価され、『僕の彼女はサイボーグ』(08)、『風が強く吹いている』(09)、『シュアリー・サムデイ』(10)など主演映画も多数。最新作『ハルチカ』(3月4日公開)では、佐藤勝利、橋本環奈といった生徒たちを導く教師・草壁信二郎を演じる。

■市井昌秀監督
1976年、富山県出身。劇団乾電池の研究生を経て、ENBUゼミナールに入学。2004年、初の長編作品となる自主映画『隼(はやぶさ)』が、数々の賞を受賞し、国内外から高い支持を得た。2013年、商業映画第1作目となる『箱入り息子の恋』が単館公開ながらも1億を超えるスマッシュヒットを記録。近作はWOWOWドラマ『十月十日の進化論』、映画『僕らのごはんは明日で待ってる』など。

小出恵介の印象

もともと小出さんって、つけるお芝居もできれば引き算のお芝居もできると思うんですけど、今回は引き算のお芝居に徹してもらいました。現場に入ってからは本当に信頼がおけましたし、ちゃんと怖いんですよね。”厳しい草壁先生”の着ぐるみを着るわけではなくて、「小出恵介、こえー!」という空気を引き出して演技してくれるので、すごく良かったです。

お芝居に対しては、小出さんが的確に表現してくれるので全く問題ないんですけど、今回は何よりも演奏するシーンでの指揮者役が大変だったと思います。生徒役の20人って、演出してても正直怖いんです。ものすごく素直な目で俺を見てくれているんです。「監督の意図を汲み取る」という目でガッと見てくるので、その感覚は、きっと小出さんも感じていたはずなんですよ。あまりそういう話はしていませんが、共通点はものすごくあると思ってて。指導する立場で壇上に上がるという、恐怖と戦ってくれた、というところがなによりでしたね。

撮影現場での様子

いい意味でふざけていましたし、生徒にもよくちょっかいを出したりと、スキンシップしていましたね。案外人を笑わせるのが好きな勝利くんも、実は小出さん演じる草壁先生のモノマネをしていたりとか。全然知らなかったのですが、そんなコミュニケーションを取っていたんだ、と思いました。

撮影中も、よく楽器演奏の練習をしていたんですけど、生徒たちも日に日に小出さんの指揮を信頼していくように構築できていたんじゃないかなと思います。生徒たちは短い人でも3カ月くらい練習を重ねていた一方で、小出さんの指揮の練習は2カ月弱だったんです。でも、集中して急速に準備をしてくれて、最終的にとても良い関係が生まれたんじゃないかなと思います。

映画『ハルチカ』でのおすすめシーン

やっぱり、本当にお客さんの前で演奏したコンクールのシーン。生徒たちが楽器の練習をしてくれたように、小出さんも指揮の練習を積み重ねてくれました。そして何より、あの20人の生徒たちからの信頼を受け止めて、壇上で指導するという恐怖と戦ってくれたということで、おすすめのシーンです。

(C)2017「ハルチカ」製作委員会