ライフネット生命保険はこのほど、「スマホ新サービス開始記念説明会」を開催。同社の岩瀬大輔代表取締役社長、LINE上級執行役員の田端信太郎氏、森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏が登場した。

(左から)LINE上級執行役員の田端信太郎氏、ライフネット生命保険の岩瀬大輔代表取締役社長、森・濱田松本法律事務所弁護士の増島雅和氏

ライフネット生命保険のスマホを使ったサービスは?

第1部では、ライフネット生命保険でのスマホサービスへの取り組みについて、岩瀬社長が説明した。同社が2016年3月から開始した「スマ速請求」では、医療保険の給付金請求手続きのペーパーレス化を実現。医療保険の給付金請求手続きに必要な「入院期間」「病院名」などの情報を、顧客にスマホなどで入力してもらい、その他書類はスマホなどで撮影した画像を提出で手続きが完了するものだという。

また、2016年12月に、生命保険の申し込み手続きにおいてもペーパーレス化を開始した。これは、スマホなどで本人確認書類を撮影して画像で提出することで、申し込み手続きがオンラインで完結するものとなっている。

「2016年4月からKDDIと提携し『auの生命ほけん』を提供しており、ペーパーレス化はこうした通信と保険の融合からの流れもあるのかなと思います。また、2016年5月の法令規定の改正により、これまで書面交付する必要があった『解約返戻金に関する確認書』の電子交付が認められたことも背景としてあります」(岩瀬社長)。

LINE上での保険プランナーとのチャット例

さらに、2016年7月には、LINE上で保険プランナーが保険選びをサポートする保険相談サービスを開始した。加えて、2017年1月には、LINEやFacebook Messenger上で、24時間チャットボットによる24時間自動応答によって、保険診断及び保険料見積もりサービスの提供ができるサービスを開始した。

同サービスでは、保険を1分で診断できる「ほけん診断」機能と、生年月日・性別・保険商品を自動ガイダンスに応じて入力でわかる「保険料見積もり」機能が追加されている。また、自動Q&Aサービスのほか、必要に応じて有人対応に切り替えて、保険プランナーとチャットで保険相談することも可能だという(平日10時~19時)。

スマホ×保険の未来は?

第2部では「AI×スマホ×生命保険が実現する未来」をテーマに、ゲスト3名によるパネルディスカッションが行われた。今回はその一部を紹介する。

パネルディスカッションの様子

田端氏「デバイスとしてのスマートフォンの普及は、日本あるいは先進国だと当たり前になってきています。手元に汎用的なコンピューターの端末が常時接続できていることを前提とした日本の世の中では、ビジネスやライフスタイルにおいてこれから変わるものがどんどん増えていくんだろうなと思っています」

岩瀬社長「日本の保険や金融の面ではどのように変わっていくと思いますか」

田端氏「モノのインターネットのIoTというのは、例えば、利用者の体重、心拍数、睡眠時間、車の走行距離といったデータを、コミュニケーションのコストがすごく低い形で抽出し、それを元に世の中全体が最適化される、といったことです。

IoTを活用した保険で考えると、例えば最近流行っている電子タバコ。あれって、もう一歩進むと1日に何本たばこを吸っているのか等のデータで分かるようになると思うんですよ。例えば、1日に20本吸っていた人が10本以下になったことがわかる、というような世の中になるかもしれない。そういったリアルタイムでリスクを細分化するものが、いろいろ出てくるのではないかなと思います」

岩瀬社長「増島さんは、ITを組み合わせた金融や保険ビジネスについてどう思いますか」

増島氏「金融はまず信用がないとビジネスが成り立ちません。その信用のためには、最低ラインとして事務処理が正確に行われることが必要です。加えて、ITを使うことによって何ができるかというと、正確さに加えて早さを実現することができていく。つまり、金融のクオリティの面では、ITの力で早さをどこまで追求できるのかが大事だと考えます。これは、保険(インシュアランス)にIT(テクノロジー)を組み合わせた『インシュアテック』と呼ばれている分野の1つだろうと思います。

もう一点は、イノベーションという観点。ユーザーが保険に入る動機は、お金が欲しいわけではないのではないかという気がしています。どちらかというと、健康保険の場合は、健康でありたい、むしろお金を払わない状態になっていたい、といった気持ちが強い人ほど、どうしたらいいんだろう? と考えて、保険に加入する傾向にあると思っています。

そういう意味では、保険のライバルというのは、他の保険会社ではなく、健康で長生きをしたいというようなニーズを果たす保険以外のビジネスなのではないでしょうか。逆に言えば、そういったビジネスと保険をシームレスにつなぐことができれば、ニーズの全部が満たせる状態をつくれるのではないかと思います。特に、インシュアテックを考えるときに、大事な視点でしょう」