男女のすれ違いやケンカは男女の脳の違いから起こっているという話を聞いたことはないでしょうか。一般的に男性は合理的で、女性は感情的であるといわれます。最近の英国の科学的な研究では男女脳の構造的な違いはなかったと発表していますが、私も経験的に男女の性格には根本的な違いがあると感じています。
人間より猫の方が違いが大きい
さて、猫でもオスとメスによって性格の違いはあるのでしょうか。個人的にはむしろ、猫の方が人よりも違いが大きいのではないかと感じます。
猫の世界はより野生に近い環境なので、雌雄の役割がはっきりと分かれています。まず、育児を"手伝うイクメン猫"は皆無です。オスは交尾が終わった数分後にはメスの元を去り二度と現れませんので、子猫の顔を拝むことはありません。私の友人の動物病院のオス猫は、新生児が保護されると世話をしていましたが、人間社会での主夫の増加に比べれば非常にまれなケースです
したがって、メス猫は妊娠から出産、子育てまでを1匹で行わなければいけません。そのためかメスの方が警戒心の強い知的な猫が多く、クールな印象を受けます。
一方でオス猫は冒険心があり、好奇心旺盛です。そのためか高いところから落ちてしまったり、アイロンで鼻をやけどしたりする猫はオスに多くいるように感じます。また、意外とオスの方が甘えん坊で、家の中でずっとついてきたり、猫なで声でおねだりをしたりしてくるのもオスの方が多いように感じます。
行動学の分野では違いが
飼い主さんと離れると不安になり、大きな声で鳴いたり、物を壊してしまうなどの問題行動をする分離不安症という病気があります。この病気は去勢済みのオス猫の方が避妊済みのメス猫よりも多かったと報告されています。
つまり、オス猫の方が飼い主さんへの依存度が高い=甘えん坊と解釈することもできます。これは上記の認識と一致します。
メス猫はクールだけど社交的
猫同士もメスの方が打ち解けるのが早いです。多頭飼育の場合、オスよりもメスの方が仲良くやっていけると報告した研究があります。
また、メスは同時期に出産した場合、お互いの子育てを助け合うことがあります。猫は人生の大半を一人で過ごす単独生活動物なので、肉親以外で協力する姿は非常に珍しいです。やはりメス猫の方が猫同士では社交的といえるでしょう。
まとめ
人の"男女脳"の違いは性ホルモンの1つであるテストステロンの影響によるものと考えられているので、猫でも性別によって性格の違いが現れても不思議ではありません。
ただ、猫の場合は避妊・去勢手術を受けることが多いですが、その後も行動に違いが出るのは興味深いですね。もちろんメスっぽい性格のオスやその反対の猫もいますが、猫も性別によって性格に違いがあるといっても良いのではないでしょうか。愛猫がどちらの性格に近いか考えてみると面白いですね。
著者プロフィール: 山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。