Adobeの写真編集ソフト「Photoshop Lightroom」で撮影データを劇的に改善しようというこの企画。プロカメラマンの高嶋一成氏が、RAW現像の基本テクニックからマジック級の裏技まで惜しみなく紹介します。

この写真を撮影したのは、春を少し過ぎたあたり。緑に包まれた畑の中に赤みを帯びたトマトを発見、ここぞとばかりにシャッターを切った。しかし、画像を開いてみると、まだまだ赤みの足りないトマトは周辺の緑に負けて、あまり目立たない……。

【ビフォー】主役であるトマトの赤みが薄い。これでは美味しくなさそう

【アフター】真っ赤な完熟トマト、まさに食べごろのイメージに

今回のLightroomnによる現像の目的は、トマトに赤みを与え、周辺の緑との対比を強調することだ。カメラ本体で色合いが調整されるJPEGの撮影データとは違い、RAWデータの場合は現像処理を行うことが前提となっているため、コントラストや彩度が浅めになる傾向がある。

色のバランスを調える過程では、パラメーターの設定変更を繰り返していく。Lightroomでは「ヒストリー」を使用して、調整をやり直せるのだが、「スナップショット」を使えばより便利。設定を変えた複数の結果を見比べながら作業できるのだ。

「スナップショット」は「現像」画面・左カラムの「プリセット」メニューの下にある。<+> ボタンをクリックすると、そのときの調整結果を保存できる。不要になったスナップショットは <-> ボタンで削除できる

スナップショットのファイル名は、デフォルトでは日時となるが、例えば「赤強め」などわかりやすい名前に変更しておくと見比べやい

基本補正を行ってから、「HSL」の「色相」と「彩度」を使用してトマトに赤みを与え、周辺のグリーンを「HSL」の「輝度」で明るめに調整した。この時、「グリーン」のみを調整してしまうと色の境にエッジが立ってしまうので、調整ポインターを使用してエッジがなじむようにする。

このように基本補正をかけた

基本補正を行った結果。肉眼で見た記憶に近い仕上がりだが、トマトの赤色はまだ弱い

「HSL」を使用してカラーバランスを調整する

このような場合、「HSL」の「彩度」から手をかけがちだが、「色相」→「彩度」の順で調整するほうがバランスを取りやすい

葉の緑を明るめにしたいので、「輝度」で「グリーン」を明るめに調整

すると、背景の白っぽい空と緑の葉の境界に不自然な色のエッジが立ってしまった。これは、境界の部分にグリーン以外の色が含まれているためだ

「輝度」の調整ダイアログの左上にある <◎> ボタンをクリック。カーソルで指定したエリアを調整するツール (名称は不明) を呼び出す

先ほどの不自然なエッジの部分にポインタを合わせて、ドラッグしながら移動させると、グリーン以外の構成色もまとめて調整できる

境界部分には、「アクア」や「ブルー」も含まれていたようだ。この◎ツールは、どの色を調整すればイメージ通りになるか、自分では判断できない場合に有効だ

境界に現れていた不自然なエッジが目立たなくなった

さて、ここまで調整して全体のバランスを見ると、トマトの赤や周辺のグリーンが強くなりすぎたような気もする。次に全体の彩度を下げるのか、個別に調整するのかという分岐点に立たされるのだが、このような時こそスナップショット再度の出番。数パターンの再調整をかけ、それぞれのスナップショットを見比べることで、より良い画像に仕上げられる。