ライフネット生命保険は、生命保険の申し込みおよび給付金請求手続きをスマートフォンだけで完結できるサービスや、Facebook MessengerやLINEで保険見積もりを受けられるサービスの開始を記念した説明会を開催した。スマートフォンは保険事業へどのような影響を与えるのだろうか。

ライフネット生命保険ではLINEで保険見積もりが可能に(画像はライフネット生命保険ウェブサイトより)

ペーパーレスでの保険加入が可能に

これまで保険商品に加入する際は、本人確認書類をはじめとする大量の書類を郵送で送付する必要があり、保険契約の成立までに数日はかかるというのが当たり前の世界だった。また、保険金の支払いにおいても、医療保険であれば診断書などの書類が必要になるため、支払いまでの間にかなりのタイムラグが発生していた。

ライフネット生命保険は2008年に設立された独立系の保険会社だが、積極的にICTを取り入れて保険契約の簡略化に力を入れてきた。そのライフネット生命が昨年実施したのが、保険契約のペーパーレス化と、医療保険の給付金請求手続きの完全オンライン化だ。

従来であれば本人確認書類などはコピーして郵送していたところを、スマートフォンで本人確認書類を送れるようになったほか、法令改正により規制が緩和され、解約払戻金に関する確認書も電子交付で済ませられるようになった。こうして、申し込みから審査、契約の成立までが完全にペーパーレスで済むようになり、契約成立までの時間も大幅に短縮されることになった。一度本人確認書類を提出してあれば、次回からは再度提出する必要もなくなるため、さらなるスピードアップが図れる。

最短で当日に契約が完了するほどのスピードアップが実現。証書が届くのが遅くなり、保険をかけたことを忘れていた、ということも少なくなりそうだ

また、給付金の請求についても、医師の診断書提出が原則として不要になり、スマートフォンからの申し込みだけで行えるようになった。診断書は一通作成してもらうのに5,000円~1万円と患者側の負担が大きく、医師にとっても診察時間以外の時間を消費する困り者だった。ライフネット生命の医療保険であれば、医師は診断書の作成にかかる時間を大幅に削減でき、また病み上がりの患者にとっても、遠くへ出歩いたり、金銭的な負担を削減できるなど、メリットが大きい。こうした原因で受け取りを諦めてしまう顧客に対し、きちんと受け取れるような環境を整えることで、顧客満足度が上がり、次なる契約にも繋げられるわけだ。

保険金受け取りまでの速度は約12倍にまで高速化を実現。かかるコストもまさに桁違いに安い

ライフネット生命によると、同社の保険申し込みに利用する端末はPCとスマートフォンでほぼ1:1という状況になっており、特にここ2~3年のスマートフォンの伸び率は非常に高いという。一方、スマートフォンは大量のテキストを入力したり、細かい操作をするのは苦手な面がある。そこで、商品構成を最小限のシンプルなものに抑えることで必要書類も最小限に抑え、ペーパーレスでの申し込みと、素早い支払い請求手続きが行えるようにしているという。商品そのものと、商品に関わる仕組みの両方をスマートフォン時代にいち早く最適化することにより、これまでの保険は面倒そうだと忌避していた層に訴求する効果があるようだ。

ライフネット生命の顧客におけるスマホとPCの比率を比較

比率は地域差は多少あるが、概ね半々に

SIやコンサルタントなどの「座り仕事」はPC率が高いが、それ以外ではスマートフォンの率が優勢だ