東京大学(東大)などは2月17日、超広域高速海底マッピングをミッションとする共同研究チーム「Team KUROSHIO」を結成したと発表した。同チームは、超広域高速海底マッピングの技術を競う国際コンペティション「Shell Ocean Discovery XPRIZE」における技術提案書審査を通過し、9月ごろに開催される実海域試験Round1へ進出することが決まっている。
月や火星よりも難しい? 深海の海底探査
地球表面の2/3を覆う海だが、そのうち海底の地形が明らかになっている範囲は、たったの1割程度であると言われている。残りの9割については、人工衛星を利用した調査が行われているが、分解能が500m~1kmという極めて荒い地図しかないというのが現状だ。これは、月面や火星表面の調査結果と比較しても荒いものであるという。
海底の地形調査はなぜ難しいのだろうか。それは、厚い海水の層により、太陽光が届かない、電磁波が利用できない、水圧が高いといったような極限の世界が広がっているためだ。一方で、近年の調査から、海底には生物資源だけでなく油田や鉱物資源などが眠っていることが明らかになりつつある。
今回、ここに米国の非営利組織 XPRIZE財団が目を付けた。同財団は、世界の大きな課題を解決することを目的とした国際コンペティションを運営している。最近では、民間による月面無人探査の技術を競う「Google Lunar XPRIZE」が話題となっており、日本からも「HAKUTO」の出場が決まっている。今回開催されるShell Ocean Discovery XPRIZEは、ロボットを利用した無人広域海底高速マッピング技術の性能を競うもので、Google Lunar XPRIZEの"深海バージョン"であるといえる。同コンペティションの主なスポンサーとなるのは、海底油田開発などを手がけるRoyal Dutch Shellだ。賞金総額として700万ドルが用意されていることから、広域海底地形調査に対する民間からの強いニーズの存在がうかがえる。
今年9月に開催されるShell Ocean Discovery XPRIZE Round1の課題は、40フィートコンテナ1個分に収まるロボットシステムを使って、水深2000mの海底で16時間以内に100km2以上の海底地形図を作成し、海底ターゲットの写真を5枚撮影するというもの。ここで10位以内に入ると、2018年9月に行われるRound2へ進出することができる。Round2では、より探査が困難な水深4000mの海底で24時間以内に250km2以上の海底地形図を作成し、海底ターゲットの写真を10枚撮影しなければならない。どこの海を調べるのかはまだ明らかにされていないという。
海底調査において、調査範囲と分解能はトレードオフの関係にある。これまでは調査範囲を狭めて分解能を高める研究のほうが多かったというが、オイル・ガス資源開発への応用が念頭に置かれた今回のコンペティションは、解像度よりも調査範囲の広さが求められており、水平5m、垂直50cm以上の解像度で500km2の海底マッピングの実現が目標となる。これまでの一般的な海底調査が10km2程度の面積を調査するものだったことを考えると、最低でも100km2の海底地形図を作成しなければならない今回のルールは、非常にチャレンジングなものである。
Shell Ocean Discovery XPRIZEには22カ国32チームが参加登録をしており、日本からは3チームがエントリー。2月16日に、技術提案書審査を通過しRound1へ進む21チームが公表された。日本からは「Team KUROSHIO」のみが進出する。