阪神電鉄が提供する「登下校ミマモルメ」は、校門や入り口など、特定の地点を通過したことを保護者にメールで知らせるものだが、街中を含めた見守りサービスは伊丹市が初となる。すでに「登下校ミマモルメ」は、全国19の都府県で展開。小中高の学校以外にも、学童保育、保育園、塾、スイミングスクールなど、すでに900校、175,000名が利用する人気のシステムとなっている。都市部の学校によっては利用率が7割を超えているケースもあるという。
一方、「まちなかミマモルメ」は小学生や認知症高齢者に対して、ビーコンタグが登録されたスマートフォンから一定距離離れた場合と、一定距離に戻ってきた場合にメールで知らせる機能がある。
さらに「まちなかミマモルメ」のもう1つの大きな機能は、ボランティアによる捜索支援機能だ。ボラティアは専用アプリをスマートフォンに入れ、小学生等の行方不明や高齢者の徘徊などの捜索協力の要請があった場合は、アプリ上で「協力開始」し、画面の指示に従ってGPSやBluetooth機能をONにすると、ボランティアのスマートフォンがビーコンの受信端末となる。これにより、もし、捜索対象者が付近を通過し、スマートフォンが信号をキャッチすると、通過情報がGPSの位置情報とともに家族に通知されるというしくみだ。
ボランティアは一般と登録があり、登録ボランティアには捜索対象者の写真や氏名が通知されるが、一般の場合は個人情報は一切通知されない。一般ボランティア自身は何もすることなく、臨時のビーコン受信機器の役割を担うことにより、捜索に協力するということになる。
「まちなかミマモルメ」は2016年の4月1日から環境が整った地域からサービスが開始され、年契約のため、今年の4月からはさらに利用者は増える予定だ。
伊丹市 安全・安心施策推進班 副主幹 中西慎二氏によれば、このシステムを導入した結果、犯罪の件数が減少しているという。具体的には、伊丹市の平成27年11月末の街頭犯罪・侵入犯罪は1782件だったが、平成28年11月末には1,405件と21.2%減少しており、これは兵庫県の平均である15.2%減少を上回っており、中西氏は「一定の効果があったと推測できる」と語る。また、導入した市民からの評価も好評だ。
しかし、課題もある。設置費用だ。
伊丹市の場合、カメラやビーコンの機器代、設置工事費、サーバ代、ネットワーク代、ソフト開発費用などで、およそ3億9500万円がかかっている。ただ、伊丹市では地方創生や地域再生戦略の交付金、交付税措置により国から1億7700万円を調達し、実際の支払いを2億1800万と半額程度に抑えている。
一方、ランニングコストは光熱費や電柱占用料、ネットワーク、サーバ保守などで約年間2,700万円だという。
今後は、市民に周知を図り、8%という利用率を向上させていくことになるが、そのためには広報活動とともに、ビーコンの受信器の数を増やす必要がある。
阪神電気鉄道 新規事業推進室 課長 小坂光彦氏 |
阪神電気鉄道 新規事業推進室 課長 小坂光彦氏によれば、「まちなかミマモルメ」のコールセンターには、すでに「センサーの数を増やしてほしい」という意見が寄せられているという。市内1000カ所に設置しているとはいえ、ビーコンの受信器は、メッシュ状に均一に設置しているわけではないので、どうしても住んでいる場所によって通過するビーコンの数に差が出てしまう。保護者の中には、通過するビーコン数が少ないことを理由に利用しないケースもあるという。
そこで、伊丹市では自動販売機に設置することも検討している。業者に市有地を提供する代わりに、自動販売機にビーコン受信器を組み込んでもらうというビジネスモデルだ。
こういった取り組みが民間活力により導入コストが下がれば、他の自治体で採用も進み、自治体連携による広域の見守りサービスも実現できるだろう。