塩野義製薬はこのほど、「注意欠如・多動症(ADHD)の子どもを持つ母親と小学校教師に対する意識・実態調査」の結果を発表した。同調査は2016年11~12月、ADHDの子を持つ母親283人と小学校教師103人を対象に、インターネットで実施したもの。
注意欠如・多動症(ADHD)は、「不注意」「多動性」「衝動性」の3種の主症状から特徴づけられている発達障害のひとつ。海外の学術論文では、18歳以下での ADHD 有病率は約5%(Am J Psychiatry2007;164:942-948)と報告されている。
母親に、子どもの行動の原因が病気かもしれないと感じたきっかけについて聞くと、51.2%が「周りからの指摘」と回答した。指摘した人はどのような人であったか尋ねたところ、「保育園・幼稚園の担任」(33.8%)、「小学校の担任」(27.6%)が多くなっている。
医療機関の受診・相談の予約を決めるまで、どのような気持ちであったか聞くと、「子どもの将来に影響の大きい病気だったらどうしようと不安」(37.8%)、「どこに相談すればよいか分からなかった」(32.2%)が多かった。
最終的に「注意欠陥多動性障害(ADHD)」と診断されて、どのような気持ちであったか尋ねると、59.7%は「症状の原因がはっきりしてほっとした」と答えた。一方で41.7%は「子どもの将来が心配で落ち込んだ」と回答している。しかし、68.5%は「医療機関に行って良かった」と受診したことを前向きにとらえていることがわかった。
ADHDの子どもの教育のためには、どのような取り組みが必要だと思うか尋ねると、「医療機関を早く受診すること」(99.6%)、「担任(副担任)のサポート」(98.2%)、「家庭での配偶者や親族のサポート」(97.9%)であった。
また、ADHDについて、どの時点で知るのが望ましいと思うか聞くと、もっとも多いのは「1才児健診~3才児健診前」(37.8%)だった。それを含め、96.8%は小学校に入学する前までに知ることが望ましいと答えている。
小学校教師に、これまでにADHDが疑われる児童を担当したことがあるか尋ねると、47.6%が「過去に担当したことがある」、48.5%が「現在担当している」と答えた。
ADHDが疑われる児童を担当した際、どのような対応を行ったか聞くと、「校内委員会への報告・相談」「特別支援教育コーディネーターへの報告・相談」は、それぞれ74.7%、70.7%で実施されていた。一方、「地域の保健・福祉・医療関係者への相談」は15.2%で、外部との連携はあまり行われていないことがわかった。
「ADHD が疑われる児童への指導や対応」、「ADHDが疑われる児童の保護者への対応」に対し、自信があると回答した割合は、いずれも42.7%だった。
ADHDが疑われる児童を担当する際、十分な指導・対応を行うためには、どのようなことが重要だと思うか聞くと、「病気の事をよく知る」(73.8%)、「学校全体のサポート」(69.9%)、「どのような学習上の配慮を行うべきかを知る」(68.9%)などが多かった。