東芝は、2016年第3四半期決算の開示を最大1カ月延期、現段階で約5000億円の赤字の見通しであることを公表した。正式に決算発表される時には、赤字額はさらに拡大する可能性がある。
開示延期の理由
東芝は2月14日、正午に開示する予定となっていた2016年第3四半期決算の発表について、開示延期の申請をし、承認を受けたことを発表した。これにより、提出期限が1カ月後の3月14日に延長された。
なぜこのような事態になったのか。東芝によると同社は、2月14日に向けて作業を進め、並行して独立監査人によるレビュー手続きを行っていた。そんな中、2017年1月8日および、19日に内部通報があったという。それは、同社のグループ会社であるウェスチングハウス社によるCB&I ストーン&ウェブスター社の買収に伴った取得価格の配分手続きの過程で、内部統制の不備があったことを示唆するものだったという。
これを受けて、監査委員会として起用された西村あさひ法律事務所などが、事実関係を調査。四半期連結財務諸表に影響が及ぶ可能性があると判断した。具体的な修正事項を認識していないため、決算を完了させるには、さらなる調査が必要との結論に至ったという。
業績の見通し
こういった事態を受け、東芝は当初予定していた決算会見をとりやめ、業績の見通しと原発事業の対応策などを発表。
同社は、発表にあたり、2016年の業績見通しとして発表される財務数値は、監査人によるレビュー手続き中で、修正される可能性があること。同社の責任において発表する見通し、見解であること。このような、ことわりをいれた。
第3四半期累積業績見通しは、売上高が前年同期比1400億円減の3兆8735億円、営業損益は5447億円の赤字、当期純損益は4999億円の赤字だという。NAND事業や、賞与の減額などがプラスの要因になったものの、原子力事業の減損額が7125億円と巨額だったため、営業損益の赤字額が拡大した。
こういったことをうけて、2016年の通期の業績見通しは、売上高が、5兆5200億円、営業損益が4100億円の赤字、当期純損益が3900億円の赤字としている。
第3四半期時点での株主資本はマイナス1912億円の見通しで、今後資本対策によって改善を図るという。
原子力事業の対応策
原子力事業の対応策については、原子力事業の監視強化委員会の設置と、同事業を社長直轄事業組織とし、コーポレートが直接関与し、リスク管理を行うことリスクのモニタリングをはかることなどを発表。
国内事業は、再稼働、廃炉などを中心に社会的な責任を継続。海外については、ビジネスモデル、収益性の異なるセグメント別に対応・戦略的選択肢を検討していくこと。進行中の8基ついては、あらゆるコスト削減施策を講じてリスクの低減に努めると発表した。
こうした原子力事業の想定外の損失計上を受け、同社の志賀重範会長が2月15日付で代表執行役を辞任する。志賀氏は、代表執行役を辞任後も6月の定時株主総会までを任期とする、代表権をもたない執行役として、ウェスチングハウス社関係の諸課題に対応するとしている。