現在、教育現場に大きな2つの変革が訪れている。ひとつは大学入試改革を2021年に控え、それまでの詰め込み型教育から思考力や判断力、表現力を育てる教育に向かうこと。そしてもうひとつがICTを利活用した教育現場の構築だ。
このほかにも、さまざまな課題が教育現場にはあるのだろうが、目下のところ、以上の2点がタスクといえるだろう。だが、ともに大きな問題をはらんでいる。それは、教える側、つまり教諭がこの変化に対応できるのかどうかということだ。
問われる思考力・判断力・表現力
まず、大学入試改革についてだが、これまでの詰め込み型教育が有利とされる試験内容から、思考力や判断力が問われる試験内容に変わる。表現力も問われるようになるので、机上のテストペーパーの問題を解ければいいという風潮はなくなる。こうした試験に向かっていくのに対し、教諭がどのように生徒たちに教育をしていくのか。
これが、まず、第一の課題。生徒たちが能動的に学び、思考力を養ういわゆる「アクティブ・ラーニング」が、こういった試験に有効だとされている。ただ、教える側、つまり教師の技量も問われる。単純に、黒板に記した問題・解答を、生徒たちがノートに写すこれまでの学習ではアクティブ・ラーニングとはならない。
一方、ICTを利活用した教育も求められ始めている。昨年、文科省は2020年を目標に、小中学校の教育において、タブレットやPCの一人一台を目指すよう答申した。
こちらは、予算さえつけばハードウェアを取りそろえることができる。だが、ただ単にハードウェアを用意すればいいというわけではない。一人一台に手渡した端末を使ってどのように授業に生かすか。
以前、ある教育関係者に話をうかがったところ、失敗談を語り出した。「生徒各一人ひとりにタブレットを配布した授業をしましたが、最初は教諭が用意した問題と答えをタブレットに送って表示するだけでした」。結局はICTを使ってのコミュニケーションは生まれず、つまり、生徒の人数分の電子黒板を用意しただけの状態になったといってよい。