マーケティング用語で"シックスポケット"という言葉がある。 デジタル大辞泉(小学館)では「一人の子供に、両親と双方の祖父母の合わせて6個の財布から、金が注がれること。少子時代を反映した言葉」と説明されているが、最近ではさらにおじ・おばを加えて"エイトポケット"とも言われており、玩具業界では重要なターゲットとして注目されている。
各社とも多様なアイテムを開発している一方で、店舗では20~30代のおじ・おばである消費者から「何を買っていいかわからない」「何が流行っているのかわからない」という声が非常に多く寄せられるそうだ。クリスマスや誕生日などの期間をのぞいては、日常的に子供向け玩具の情報に触れることがないおじ・おばにとって、トレンドをつかむのは難しいところ。メーカーとしても、このカテゴリーの消費者に必要な情報が届いていないことを感じているという。
今回は、業者向けに開催された「春のおもちゃ商談会2017」で、多くの子ども向け玩具を販売しているセガトイズブースを取材。特に女の子向けの最新アイテムを、セガトイズ・プロダクト企画本部の東方嘉基さんに紹介してもらった。
アンパンマン×知育玩具の定番アイテムが大リニューアル
バンダイがクリスマスシーズンに合わせて毎年行っている「今年のクリスマスに関する意識調査」では、2015年の調査において「知育玩具」が「今年の親から子どもへのクリスマスプレゼント」で、13年連続1位だった「ゲームソフト」を抜いて首位となった(2016年は「ゲームソフト」が1位)。兄弟・姉妹である親にも喜ばれるものであることから、知育玩具はおじ・おばが最も安心して贈ることができるアイテムといえる。
「アンパンマン おしゃべりいっぱい!ことばずかんSuperDX」(2月9日発売、10,584円/税込)は、不動の人気を誇るキャラクター「アンパンマン」とコラボした知育玩具「ことばずかんDX」シリーズの最新版。同シリーズは、売上累計110万台を誇るミリオンヒットアイテムとなっている。
日本語1,400語以上、英単語800語以上を収録し、付属のペンをタッチすることで動物や車などさまざまなものの名前を学習することができるのが売りだが、今回は新たに「二語文モード」を搭載した。"二語文"とは、「おかあさん、すき」「りんご、たべたくない」など2つの単語を結びつけた最もシンプルな文章。東方さんによると、「お母さんにとって一番うれしいのは、子どもが何を考えているかというのがわかって、お母さんの言っていることの意味が子どもに伝わっていくこと。そうして親子の世界が広がっていくことなんです。二語文はその第一歩」であるという。
なお、二語文の作成で選ぶ組み合わせには、「じてんしゃ」+「たべる」など、常識であればありえない表現を作ることも可能なのだが、アンパンマンは頭ごなしに否定することはせず、やんわりフォローしてくれる。「言葉はどんどん進化していく可能性があるので、今後出てくる表現かもしれないから」と余白をもたせるのは、子どもの発想の自由を妨げないよう配慮した子ども向け玩具らしい仕様ともいえる。
また、乳幼児向けの英語学習でも、英語圏で19世紀の初めに子どものために考案された、「フォニックス学習法」を取り入れたアンパンマンの知育玩具「うたって♪そだてる♪英語耳 チャチャチャ チャンツ♪ はじめてのアンパンマン ABC ボード」(4,860円/税込)が2月9日に発売。アルファベットには通常の「エー、ビー、シー」といった名前のほかに「フォニックスアルファベット」と呼ばれる"文字の音"があり、歌と言葉遊びを通じてネイティブの発音に慣れる耳を育んでいくという。「子どもの将来の可能性を広げてあげたい」という親の願いから、「"しゃべる・聴く"といった日本人の英語学習における障壁を幼いころにとってあげたい」という思いが開発の起点になった。
お母さんたちの"あるある"を解消する、スマホ時代の新定番
乳幼児と接していると、"大人のマネをしたい"という気持ちが強いことに驚く。現在の大人が多くの時間を使っているのは、"スマホを触る"ことであり、当然子どももマネをしたがる。落とされ、かじられ、お母さんのスマホは常に危険にさらされている。親は子どもに渡したくない、だが渡さなければ泣いてしまう。そんな難題に答えるべく開発されたのが、「ディズニーキャラクターマジカルポッド」(発売中、各10,584円/税込)だ。
店舗では、「数年前から定番で、毎月コンスタントに売れている」という。iPhone 3Gほどのサイズで、タッチパネル式。カメラ機能に加え、ゲームなど28個のアプリが入っているほか、別売りのSDカードでアプリを追加することもできる。さらに、7・8歳向けとしてタブレット型の「ディズニーキャラクター マジカルパッド~ガールズレッスン~」(発売中、15,984円/税込)もあるというから驚きだ。
玩具業界の新しい波は「メイキングトイ」
縮小している玩具市場の中で、右肩上がりの成長を見せているのが、手芸などの「メイキングトイ」ジャンル。「日本おもちゃ大賞2016」ではアガツマの「ラブあみ基本セット」がガールズ・トイ部門において大賞を受賞するなど注目を集めているジャンルだが、セガトイズは体に安全なシリコンを使ったメイキングトイ「ぷにジェル」シリーズを昨年発売。年間販売10万個を超えると大ヒットといわれる玩具業界において、「ぷにジェル」は15万個に迫る勢い。2016年、クリスマス商戦の女児ホビーカテゴリーでは1位を獲得した。
「ぷにジェル」は、2種類のジェルを混ぜて型に流しこみ、あとは自由にビーズや写真を加えてアレンジして、ブレスレットなどオリジナルのアクセサリーやチャームを簡単に作ることができるトイ。基本セットの「キラデコアートPG-01 ぷにジェル ベーシックセット」(発売中、3,780円/税込)のほか、ディズニーキャラクターやハローキティとのコラボもある。
同商品のヒットについては、「単に"ものづくりができる"という売り方ではなく、ジュエリーアーティストという"女の子が憧れる職業の体験ができる"ことを打ち出したのがよかったのではないか」と東方さんは見る。「大人のトレンドは変わっていくが、子どもが"大人のマネをしたい"という気持ちは変わらない」という認識が子ども向け玩具のセオリーになっているという。