ドラマや映画に引っ張りだこの鈴木亮平が、満を持して連続ドラマ初主演を飾ったのが、ルパン三世の人気キャラクターが主人公の「銭形警部」だ。しかも本作は日本テレビとWOWOW、インターネット動画配信のHuluが三位一体となって共同製作した気合十分の勝負ドラマ。「面白いものを作りたい」という情熱の下でタッグを組んだ日本テレビの加藤正俊プロデューサー、WOWOWの加納貴治プロデューサー、Huluの岩崎広樹プロデューサーを直撃した。
『銭形警部』は2月10日(金)21時からの日本テレビのスペシャルドラマを皮切りに、同日から日本テレビ放送終了後、Huluで『銭形警部 真紅の捜査ファイル』と題した全4話のストーリーを独占配信、さらにWOWOWの『連続ドラマW 銭形警部 漆黒の犯罪ファイル』が2月19日(日)22時よりスタートする。
これまで漫画やアニメなどのハードルが高い実写化作品で、ストイックなまでに役に寄せてきた鈴木が、今回も見事にとっつぁんこと銭形警部に成り切った。エリート刑事&人情厚い男・銭形の人となりを丁寧に描きつつ、実写ならではの迫力のアクションも見応えたっぷりだ。また、部下の警視庁捜査1課の女性刑事・桜庭夏希役に前田敦子、同じく捜査1課の刑事・国木田晋太郎役に三浦貴大を迎え、銭形との絶妙な掛け合いを見せる。
――「銭形警部」を地上波、衛星放送、ネット配信という異なる3社で製作された経緯から聞かせてください。
加藤「まずは今までに新しいことをやりたい、というのが始まりでした。TBSとWOWOWが『MOZU』を作って話題になって、それを超えるようなものを日本テレビでもやりたいと思い、だったらHuluも含めた3社でやろうと。その中で出てきたのが『ルパン三世』の銭形警部を主人公としたドラマだったんです。あれだけの人気キャラクターなので、実現不可能かとも思いましたが、ダメ元でモンキー・パンチ先生に打診をしたら快くOKをいただきまして。じゃあ、主役は誰だろう。鈴木亮平さんしかいないんじゃないかと満場一致で決まって、オファーをしました。ルパンのことは知っていても、銭形がどういう人間なのかは意外と知られていない。だからこそ、オリジナルストーリーのドラマとして展開していけると思いました」
加納「WOWOWではベースにサスペンス要素を入れたいと思い、アクションサスペンス、密室サスペンス、ヒューマンサスペンスと、3つの要素を各話ごとに盛り込んだ感じです。人間ドラマを軸にしたストーリーにしたかったので、最初からそのことを共有させてもらって作りました。実際、鈴木さんも日テレ、WOWOW、Huluでキャラクターを演じ分けてくれているんです。日テレとHuluは『ラストコップ』で組まれていますよね?」
岩崎「そうですね。一番最初が2015年の『ラストコップ』でした。Huluは今回ヒューマンなテイストのドラマとなっています。銭形警部は女性に対して不器用な感じがあるので、銭形が女性とどうコミュニケーションを取り、どう守って行くのかという物語が描かれていきます。両親を失い傷ついた少女を守ったり、昔愛した女性が出てきたりしますが、そこで知られざる銭形の顔が出てきます。亮平さんらしい誠実な人柄がにじみ出ていていいんですよ」
――鈴木亮平さんは声色まで変えて銭形警部を演じたそうですね。
加藤「僕らはアニメのマネをしてとは言ってないんです。鈴木さんが自分で研究して独自の銭形を作ってきてくれて。正直、撮影を始める前はどんな銭形になるのか不安でしたが、鈴木さんが演じる銭形には驚くほどリアリティがありました。3社それぞれストーリーのテイストが違う中、コメディ、シリアス、アクション、すべてのシーンに人間臭さがあふれてますね」
加納「三社三様なので、3つの銭形が楽しめる。とにかく鈴木さんの演じ分けがすごいし、あとは周りのキャストも非常にハマっているんです。レギュラーの渡辺いっけいさんをはじめ、各話版のゲストも含めてすごくいい。もちろん銭形警部1人で見ても面白いんですが、他のキャラクターとのアンサンブルが面白くなっているかなと」
岩崎「そうですね。WOWOW版の安田顕さんとのやりとりでは大人っぽい銭形が出てくるし、Huluでいえば子役の住田萌乃ちゃんとのやりとりで、銭形がちゃんとかがんで話すんです。きっと銭形は子どもに対してこういうふうに接するんだろうなと。そういうゲストとの交わりで、いろいろな銭形が立体的に浮き上がってくるところが面白いですね」
加藤「銭形はやればやるほど、かめばかむほど味が出て来るキャラクターなんです」
加納「しかもたまたま今年、『ルパン三世』原作誕生50周年なんです。狙ったわけじゃないんですが、1967年に漫画の連載が始まっているので。しかもモンキー・パンチさんの80歳記念でもあるんです」
岩崎「もしかして、今の子どもたちはルパン三世についてよく知らないかもしれないけど、子どもたちもいっしょに『銭形警部』を観ることで伝わっていくでしょう。どんどん若い世代に面白い物語を受け渡していければいいなとも思っています」
――今回、初めて3社でタッグを組まれましたが、今後の展開について聞かせてください。
加藤「これからはこういう企画が大掛かりじゃなくてもできるようになってくる可能性はあると思います。実際僕らは、面白いものを作ろうと頑張るだけなので、その間口がどんどん広がるのは、クリエイターとして喜び以外の何ものでもないですから。こういう時代だからこそ、勝ち残っていくというよりは、刺激を受けられる相手と組んで、より面白いドラマを作っていけばいいんだと思っています」
岩崎「Huluではいろんな作品を配信させてもらっていますが、テレビ視聴率がいい作品はHuluでもたくさんの方に観られているんです。結局は面白いものをみんな観ていて、それが大きなテレビ画面なのか、パソコンなのか、スマホなのかと、手段が変わるだけかなと。Huluで大人気の『ウォーキング・デッド』などはやはりみなさんが観たいと思う人間ドラマが詰め込まれていて、純粋に面白いからかなと」
加納「WOWOWでもオリジナルのものを制作していますが、そもそもWOWOW自体が世界中の面白いコンテンツを集めて放送しているので、面白いものじゃないとお客さんは観てくれないんです。僕らのように制作に関わっている側から見れば、世の中がどう変わろうと面白いと思ってもらえるものを作っていくしかないと思います。もちろんHuluが面白いものを作ったら悔しいのでWOWOWも頑張ろうと思いますし、『銭形警部』であれば日テレが視聴者にいちばん観られているから、まずはそこを観てもらうようにするのもWOWOWやHulu の仕事だと思っています。面白いものを作らないといけないというベースにある考え方はみんな同じです」
岩崎「日テレは視聴率を取ることが目標だし、WOWOWやHuluにとってみたら加入者を集めるのが目標だったりはしますが、今回はとにかく観てもらえるものを作ろうというところで同じ方向を向けた気がします。宣伝もそうだし、イベントをやるにしても3社が集まって喧々諤々とやるんですが、最終的には3社が歩み寄った共同プロジェクトだからやれたんだと思います」
加藤「やってみたら、子どもの頃から見ていた愛すべきキャラクターのオリジナルストーリーを作っていることに、少年のようにわくわくしました。純粋に僕らが面白いものを作ろうと思えたのは『銭形警部』という題材だったからかなと。今回、鈴木亮平さんに断られたらこの企画はなかったと思いますが、引き受けてもらえて良かったです。いろんな奇跡が積み重なってできたドラマだと思いますので、ぜひ観てください」