「(トヨタ自動車との)提携は本日スタートする」。2017年2月6日、2016年度第3四半期の決算会見に登壇したスズキ代表取締役副会長の原山保人氏は宣言した。2016年10月に提携に向けた協議を開始すると発表してから100日以上が経過し、ついに始まった両社の協業。気になるのは中身だ。

4つの分野で事業性調査

両社は2月6日、業務提携に向けた検討を開始することで覚書を締結した。発表によると、協業の可能性がある分野は「環境技術」、「安全技術」、「情報技術」、「商品・ユニット補完」などとなっている。

例えば環境技術1つをとってみても、電気自動車やハイブリッド車など内容は様々なわけだが、具体的な協業領域について原山副会長は明言を避け、これから「フィージビリティスタディ(事業性調査)」を実施すると述べるにとどめた。スズキと同じ日に決算会見を行ったトヨタの早川茂取締役・専務執行役員も具体的なことには言及しなかった。

同日に決算会見に登壇したスズキの原山副会長(左側)とトヨタの早川取締役・専務執行役員

提携に両社が望むものは

覚書締結を受けてコメントを出したスズキの鈴木修会長は、今回の提携を「将来技術の開発に懸念を抱えるスズキから求めた提携関係」と表現している。電動化や知能化といった最先端の技術がトレンドとなる自動車業界を1社で乗り切っていくのは、資金面をみても人的資源をみても厳しいとの見方を端的に示した言葉だ。2016年10月の会見では、「良品廉価のクルマづくりでは行き詰まってしまう」と鈴木会長が語っていたのが印象的だった。

2016年10月の会見に登場したトヨタの豊田章夫社長(左側)とスズキの鈴木修会長

トヨタとの提携により、スズキは最先端技術にキャッチアップできる可能性が出てきた。それではトヨタはスズキに何を望んでいるのか。おそらく、豊田社長が昨年10月の会見で何度も言及していた「標準化」と「仲間づくり」という考え方がポイントになる。

クルマの最先端技術については国境を越えたチーム分けが進んでおり、いまや複数の企業グループによる開発競争の様相を呈している。これからの技術については、いかに自分達の陣営に多くの仲間を作り、世界標準の構築を進めるかが重要になる。年間300万台の自動車を作るスズキと組むことは、トヨタにとってもメリットがあるのだろう。

原山副会長によると、両社によるフィージビリティスタディは覚書を締結した2月6日から始まっているとのこと。両社は協業できる領域を見極めてから、個別の提携交渉を進めるという。資本提携の可能性については、昨年10月に両社トップが語った「ゆっくり考える」という言葉を引用し、現在も状況は変わっていないとしたトヨタとスズキ。提携は一歩前進というところだ。