米労働省が2月3日に発表した1月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数22.7万人増、(2)失業率4.8%、(3)平均時給26.00ドル(前月比0.1%増、前年比2.5%増)という内容であった。
(1)1月非農業部門雇用者数は、市場予想(18.0万人増)を大きく上回る22.7万人増となり、前回の15.6万人増から増加幅が拡大した。3カ月平均でも18.3万人増に持ち直しており、昨年9月以降続いていた増加幅の縮小はストップした。米雇用市場は完全雇用に近いため、もはや大幅な雇用の増加は期待できないとの見方を裏切る好結果であった。
(2)1月失業率は市場予想(4.7%)を上回る4.8%となり、前回から0.1ポイント上昇した。2カ月連続の悪化ではあるが、労働参加率が62.9%に上昇して労働市場の裾野が拡大している点に鑑みれば、一概にマイナス要素とは言えないだろう。また、やむを得ずパート職に就いている労働者なども含めた広義の失業率(不完全雇用率、U6失業率)は、前月から0.2ポイント上昇して9.4%となった。
(3)1月平均時給は市場予想(前月比0.3%増、前年比2.7%増)を下回る伸びにとどまり26.00ドルとなった(前月比0.1%増、前年比2.5%増)。また、前年比で7年半ぶりの高い伸び率を示していた前回分が25.97ドルに下方修正(前月比0.2%増、前年比2.8%増)されるなど、全体的に物足りなさが残る内容であった。
市場はこの米1月雇用統計に対して、債券高(金利低下)・ドル安・株高という反応を示した。平均時給増加率の減速が決め手となり、早期利上げの可能性が後退したとの見方から長期金利が低下するとともにドルが押し下げられた一方、雇用の拡大(が続く中での利上げ先送り観測)を好感して株価が上昇するという動きであった。
なお、トランプ米大統領は、米1月雇用統計発表後に「雇用の数値に非常に満足している。国民には活気がある」とのコメントを発表した。10年で2,500万人の雇用創出を公約としてスタートしたトランプ政権に取って、非農業部門雇用者数の大幅な増加は嬉しい誤算であろう。平均時給の物足りない結果についても、減税や規制緩和といったインフレ政策を推し進める上ではむしろ好都合と言えるのかもしれない。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya