民放ラジオ局11社が参加し、博報堂DYメディアパートナーズを事業主体として始まった「ラジオクラウド」。ラジオ番組を核とする音声コンテンツ配信プラットフォームアプリなのだが、この取り組みで注目すべきは、日本において新たな広告市場を開拓しようとしていることだ。“ラジオ版スポティファイ”とでもいうべき画期的なサービスが始まった。
ラジオクラウドとは何か
ラジオクラウドは無料で音声コンテンツを聴けるスマートフォン用アプリだ。聴くことができるのは、参加ラジオ局が提供するコンテンツ。基本的にはラジオ番組の一部を切り出したものだが、一部オリジナル番組も含まれる。聴き方としてはコンテンツをダウンロードすることもできるし、ストリーミングで聴くこともできる。参加しているラジオ局は、TBSラジオ、ニッポン放送、文化放送の在京AM3局を含む計11局だが、今後は増えていく見通しだ。
ラジオクラウドが生まれた経緯は少し複雑だ。まず前提として、多くのラジオ局は、ラジオ離れへの対策として、ポッドキャストにラジオ番組の一部を切り出したコンテンツを配信している。しかし、TBSラジオではポッドキャストの人気が予想以上に高まり、ダウンロード件数が増えたためサーバー費用などをまかなうことが難しくなった。そこで同社は「TBSラジオクラウド」というサービスを立ち上げ、ポッドキャストの人気コンテンツをストリーミング配信に切り替えて継続していた。TBSラジオクラウドがアプリ化したものが「ラジオクラウド」だ。
ポッドキャストでは番組をスマートフォンにダウンロードして聴けるが、TBSラジオクラウドではそれができなかった。この辺りを不便に感じるリスナーも多く、TBSラジオではTBSラジオクラウドのアプリ化とダウンロード機能などの実装を急いでいた。
音声コンテンツ配信の収益化に向けて
TBSラジオが始めた取り組みに、アプリ化のタイミングで他のラジオ局も参加することになったのはなぜか。それは、TBSラジオがTBSラジオクラウドの立ち上げ時から掲げている目標、つまりは音声コンテンツ配信の収益化を達成するためだ。
この辺りの事情を説明するために、まずは音声コンテンツ配信の収益化がいかに可能性の大きいビジネスであるかを見ておきたい。