子育てしながら、自分のペースで仕事をするための選択肢として、パパ・ママたちに注目されている「フリーランス」という働き方。このほど、そんなフリーランサーたちを支援する団体が立ち上がった。
1月26日に発足した「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」は、フリーランスが働く環境の改善を目指す任意団体。フリーランスの実態を世の中に発信し、個人の働き方の多様化をより進めていきたいとしている。
同協会では、どのような活動内容が想定されているのだろうか。そして、実際にフリーランスとして働くパパ・ママたちの実態は? 設立記者会見の内容をレポートする。
敷居の高さ、制度的な不利を解消したい
いまや1,000万人以上の働き手がいると想定されている、フリーランス。エンジニアやデザイナーなど、クリエイティブ職のイメージが強いかもしれないが、近年では、家事代行やネイリスト、それに営業・広報職など、さまざまな分野で活躍するフリーランサーが増えている。さらに副業や在宅ワークの広がりで、複数のキャリアを持つパラレルワーカーの活躍もめざましい。
一方で、そのような多様な働き方があること自体、まだあまり広く知られておらず、抱える課題も多いというのが現状だ。
フリーランスの仕事を紹介する人材会社「Waris」を経営し、同協会の代表理事を務める田中美和さんは、「ローンが組みにくい、労災保険や雇用保険などの社会保障が手薄いなどの課題がある」と語る。独立に伴い、営業や経理など、自分の専門分野とは違うスキルを求められることもあり、難しさを感じる人も多いという。
同協会では、企業と個人、そして政府・自治体などがつながることで、これらの課題を解決していくことを目的としているとのこと。
個人会員向けには、フリーランサーどうしのつながりをつくる懇親イベントや、専門スキル・専門以外のスキルを身につけるためのセミナー、それにフリーランスの働き方を紹介する「新しい働き方EXPO」などを開催予定。また、同協会に加盟する23の団体や企業は、フリーランス向けの支援サービスプランを開発したり、働きやすい環境づくりを政府などに提言したりすることを考えているそうだ。
パパ・ママだからこそ、フリーランス
会場では、さまざまな分野で活躍するママフリーランサーと出会うことができた。このうちの1人、西光千佳さんは、オンラインの英会話レッスンで、子ども向けの講師として活躍中の1児のママ。客室乗務員の経験を生かし、英会話教室などで勤務していたが、出産を機に退職し、現在はフリーで働いているという。
「育児をしながら、一度離れてしまった仕事を一から始めるのは難しいと思っていた」と西光さん。しかし、オンラインレッスンの仕組みを使うことで、現在、子どもを幼稚園に通わせ、保護者会の活動に力を入れながらも、「子どもが寝た後」に、在宅で仕事ができるようになったのだとか。
また、ネイリストの藤本怜美さんは、2人目の出産を機に、ネイルサロンを開業。サロンに勤務していたときは、子どもが熱を出したときなどに、早く帰ることを申し訳なく感じていたというが、今では柔軟な働き方が実現できているという。
ネイルサロンの空き時間を使って、出張ネイルサービスも行っていて、子育て中のママなどに好評とのこと。「将来は病院など、ネイルサービスを受けにくい場所へも出張したい」と今後の展望も語ってくれた。
さらに、子どもが生まれ、フリーランスへ転身するのは、女性だけではないようだ。ライターとして活躍する三河賢文さんは、長男が生まれた時に、勤めていた会社を退職。「子どもの成長をもっと身近で見ていきたい」と感じ、独立したという。
「家にいる時間が多いので、保育園に迎えにもいけるし、平日、ガラガラにすいたレジャー施設へ、遊びに行くこともできる。子育て中の女性だけでなく、子育て中の男性こそ、フリーランスという働き方は魅力的」と三河さん。働き方が柔軟になったことで、パートで働く妻との育児分担も、スムーズになったそうだ。
2017年春には一般社団法人化し、当面はフリーランスの認知向上に努めるという同協会。3月までに、フリーランスのための確定申告セミナーやパラレルワーカーを始めるための講座開催を予定し、現在、さまざまなサービスを受けられる有料会員と、年会費無料のメルマガ会員を募集しているという。
子育てをしながら、自分のペースで働きたいという人たちの働き方の選択肢は、今後ますます広がっていきそうだ。