ストレスがさまざまな疾病を招く恐れがあるのは周知の事実と言える。ただ、病気まではいかない頭痛やおなかの痛みといった「ちょっとした悩み」も、実はストレスが原因の可能性もあるかもしれない。
海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「一見するとストレスとは関係なさそうな病気」に関するコラムが掲載されたので紹介しよう。
かかりつけ医のロジャー・ヘンダーソン医師によると、頭痛や不眠症、果ては大量の汗までストレスが原因になりうるとしている。どのように対処すべきかも併せて、各種の病気をまとめた。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、約1,300万人のイギリス人と4,500万人のアメリカ人に影響を及ぼしており、「腹痛」「気分が悪い」「下痢」「便秘」「腹部膨満」などさまざまな症状がみられる。正確な原因は不明だが、イギリスの医師の94%はストレスが引き金になっていると言う。
「脳と消化器系は複雑に絡み合っているということはよく知られています。だから、お腹の調子は気分次第なのです。腹部と腸は数百万個の神経細胞で結ばれており、消化器系を制御しています。これらの神経細胞を伝わって腸と脳がメッセージのやりとりをします。だから腸が脳に送るメッセージによって気分も影響を受け、緊張しているとハラハラ・ドキドキし、ストレスを感じている際は脂っこいものを食べたくなるのです」とヘンダーソン医師は語る。
解決法としては運動や深呼吸、おしゃべり、友人との外出などがお勧めで、過敏性腸症候群には初期段階で鎮痙(ちんけい)剤を飲めばよく効くという。
過度の汗
ストレスを感じた際になぜ汗をかくのかに関しては、さまざまな議論がある。ただ、汗を出す腺には2種類あり、何らかの身体活動を伴う際に汗を出す「エクリン腺」とストレス時に汗を出す「アポクリン腺」が存在していることは明白となっている。前者はそのほとんどが水分である一方、後者はたんぱく質と脂質が多く含まれている。
「バクテリアが最も繁殖しやすく、体臭の原因にもなるのがアポクリン腺から分泌される汗と科学者は考えています」とヘンダーソン医師。
飛行機に乗ったり戦ったりすると、私たちの体はいわゆる「ストレスモード」になり、アポクリン腺から汗が皮膚表面ににじみ出る。過度の汗に悩まされ、日常生活に支障をきたすようであればかかりつけ医に相談するとよい。
歯ぎしり
ストレスと歯ぎしりの間には関連性があるということが研究により判明している。ストレスのほかに不眠症や不安、アルコール・カフェインの摂取などの複数の要因が引き金となり、歯ぎしりは起きる。
歯ぎしりに伴う症状として最も多いものは頭痛で、他にも不眠症や耳の痛み、あごの筋肉痛などがある。そして何より、歯の食いしばりを続けていたら歯が摩耗し、歯そのものを失うリスクも出てくる。
「歯ぎしりに苦しんでいるならば、適切な医療サービスを提供できる歯科医に会うことが重要です。歯科医に自分に合ったマウスピースを作ってもらうのがいいです」とヘンダーソン医師は語る。
抜け毛
長期にわたり過度のストレスがたまると脱毛の原因になる。ストレスホルモンにより毛包が休止状態となり、洗髪やブラッシング時に毛が抜けるようになる。ただ、ストレスが原因となる抜け毛にもいくつか種類があるため、かかりつけ医にきちんと診断してもらう必要がある。
「脱毛は懸念材料ですが、大抵の場合はストレス解消方法を用いて適切に対処することで、数カ月かかりますが再度生えてきます」とヘンダーソン医師は語る。
不眠症
ストレスと不眠症は切っても切れない縁がある。ストレスによるホルモンは睡眠と覚醒のバランスを崩す。解決法としては、テレビ閲覧やスマートフォンいじりは就寝2時間前までとすること。その他にも「毎日同じ時間に就寝・起床する」「運動を欠かさず行う」「バランスのとれた食事をとり、カフェイン飲料やアルコール飲料を避ける」なども大事という。
疲労
ストレスによる不眠症は、時に慢性疲労を引き起こす。The Mental Health Foundationによると、英国人のほぼ3分の1が睡眠不足であり、そのほとんどが自身のキャリアと財政面の心配から眠れない夜を過ごしているという。
ストレスが引き起こす睡眠不足は、気分の落ち込みも伴って、結果として疲労を招く。不安などの「精神面での健康問題」は、休日をはさんでも私たちの心を疲れさせる。一刻も早くこのような状況を脱しなくてはならないが、そのための解決法はズバリ、「ストレスの原因を見つけること」に尽きる。
ヘンダーソン医師は「もしも原因がわからなければ、セラピストやカウンセラーに相談しましょう。定期的な瞑想や運動、バランスのとれた健康的な食生活も心をリラックスさせるのに役立ちます」と助言を送っている。
生きていく以上、ストレスのない生活を送ることは不可能。きちんとストレスマネジメントをするように心がけていても、心身に何らかの不調を感じるようだったら、早めに医療機関を受診するようにしたい。
※写真と本文は関係ありません
記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。