みんなは貯金がいくらあるんだろう? とても気になることですが、給料はほとんど変わらない会社の同僚はもちろん、学生時代の親しい友人にだって聞きにくいもの。そこで毎年、金融広報中央委員会が行っている「家計の金融行動に関する世論調査 単身世帯」の2016年データから、いまどきの20代・30代シングルの貯蓄事情を探ってみました。

20代と30代では、やはり貯蓄額に大きな差がある

まずは、一番気になる貯蓄額から見ていきましょう。下図が金額ごとの分布で、最も多いのが20代は100万円未満、30代は500万~700万円未満、700万~1,000万円未満が同数となっています。

◆金融資産保有額(金融資産保有世帯)

中央値は20代が158万円、30代は500万円。これがお金を貯めている人の平均的な貯蓄額といえそう。平均値ではなく中央値を紹介したのは、データの分布が対称ではない場合、平均値よりも中央値の方が全体の傾向を表す代表値として実感に近いからです。

 平均値=データの値をすべて足して、データ数で割ったもの
 中央値=データを小さい順(または大きい順)に並べた真ん中の値

貯蓄額を見ると年代相応にしっかり貯めている感じがしますが、実はこれは貯蓄(金融資産)を保有している人のデータ。何と貯蓄をしていない人が20代の約6割、30代は5割弱もいるのです(下図)。

◆金融資産の有無

ちなみに、調査を始めた2004年からのデータを確認してみると、20代は昨年(2015年)の62.6%に次ぐワースト記録、30代に至ってはワースト記録を更新しました。かつては貯蓄がない人は3割前後でしたが、2011年から徐々に上昇。生活の厳しさは、貯蓄の有無にも反映されているといえそうです。

貯めている人はセオリー通りきっちり貯めている

では貯めている人は、収入の中からどのくらいの割合を貯めているのでしょう。年齢や家族構成を問わず、一般的に最低限、貯めたいとされるのが手取り収入の10%。20代も30代も10~15%が最も多いということは、多くの人がこのセオリー通り貯めているといえそうです。

平均は20代が18%、30代が19%とやや高めですが、シングルの場合は一人暮らしなのか、実家暮らしなのかということが貯蓄割合を大きく左右しますから、実家暮らしの人が多く貯めていることで平均値をアップしていると想像できます。

◆年間手取り収入(臨時収入を含む)からの貯蓄割合(金融資産保有世帯)

収入が少なく毎月の収入の中からはまとまったお金を貯めることができない人にとって、臨時収入=ボーナスからどれだけ貯めることができるか、ということは、貯蓄をふやすための大きなポイント。きちんと貯めている人は、このセオリーもしっかり守っていることが下図からもわかります。

20代、30代共に最も多いのは60%以上。平均でも40%前後は貯めているのです。ボーナスをあてにして買い物をしたり、無計画に使ったりしていたのでは、やはりお金は貯まらないといえそうです。

◆臨時収入からの貯蓄割合(金融資産保有世帯)

これからはどうやって貯める? いくら貯める?

貯蓄ゼロからお金を貯めるには、財形貯蓄や社内預金といった給料からの天引きや、給与振込口座からの自動積立定期預金が基本ですが、ある程度のお金が貯まってきたら預け先を検討する必要があります。そんなとき、20代・30代はどんなことに注目しているのでしょう。

下図からわかることは、20代と30代では考え方が確実に変化しているということ。20代は収益性よりも安全性を重視していますが、30代は安全性よりも収益性への比重が高まっています。これは社会人経験を重ねることで貯蓄への関心が高まったから、金融商品に対する知識が増えたから、さらに預金ではお金が増えないことや将来へ不安を現実的に考えるようになってきたから、ではないかと想像できます。

そして差が最も大きいのが「流動性=現金に換えやすいから」で、30代は20代の半分以下という結果。現金に換えやすいということは便利なようですが、お金を貯めるという意味からは、あまりいいことではありません。30代はこれまでの経験から、現金に換えやすいとお金が貯まらないと感じているのでしょう。

◆金融商品の選択基準(金融資産保有世帯)

住宅購入や教育費といった具体的な貯蓄目標を設定しにくい20代・30代シングルですが、貯蓄額の目標くらいは設定しないとモチベーションが高まりません。最後に、みんなの目標額をチェックしておきましょう。

20代・30代共に多数派は200万円未満と、1,000万~1,500万円未満。キーワードは100万円と1,000万円と類推できます。100万円は直近の目標、1,000万円はまとまったお金の最初の目標という所でしょうか。中央値を調べてみると20代は500万円、30代は1,000万円。これが、いまどき20代・30代の貯蓄目標の最大公約数といえそうです。

◆金融資産目標残高

これを見て自分の貯蓄額が少ないと感じた20代・30代のみなさん、シングルのときが人生の中でも最大の貯め時です。シングルのいま、しっかり貯蓄をしてこれから先の長い人生に備えましょう。


鈴木弥生
編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。