厚生労働省では12月27日、塩崎恭久大臣を含む管理職が部下のワークライフバランスを考える上司を目指す「イクボス宣言」を行った。この中で、若手職員で結成した大臣直轄の特命チーム「女性・イクメン活躍検討チーム」(ジョカツ部)が、女性活躍やイクメンを推進するための提言を大臣に提出。その内容とはどのようなものなのか。

厚生労働省で「イクボス宣言」。若手職員による提言は?

必要なのは「働き方改革」と「男性の育児・家事参加」

大臣らのイクボス宣言と合わせて、若手職員らが提出したのは「私たち世代が考える女性活躍推進のカタチ~『できること』でなく『すべきこと』を考える~(1,417名の生の声から見えた課題と政策の方向性)」と題した提言。将来的検討事項も含め、必ずしも、既存の制度、予算、関係団体との関係にとらわれることなく、「すべきこと」を検討したもの、としている。

生活者の「期待」「不満」「怒り」の声(厚生労働省「私たち世代が考える女性活躍推進のカタチ~『できること』でなく『すべきこと』を考える~(1417名の生の声から見えた課題と政策の方向性)」より)

この提言を作るにあたって実施したヒアリングは37回。学生や就職関連会社、子育て中の人、働き方改革に携わる人たちなど、1,417名から声を集めたという。

その結果、「子どもがいるし、定時で帰らないといけないし、正社員は無理と判断」(40代/既婚女性/子2人)、「育児がしたいけど、残業多くて帰れない」(20代/既婚男性/子1人)、「働いてないから預けられない。夫は残業で帰ってこない。実家は遠くて帰れない。子どもが小さくて外にも出られない」(30代/既婚女性/子1人)などが寄せられた。

同チームはこれらの声や、さまざまなデータから、「今後は2本の柱『企業の働き方改革推進』と『男性の育児・家事参加』に特に力を入れるべき」とまとめた。

女性の就労者数は過去3年間で100万人増加しており、第1子出産を機に離職した人の割合も減少していることなどから「女性は頑張っている」と評価。一方で、「男性の育児休業取得率は全然伸びていない」(日本の男性の育児・家事参加時間は欧米主要国と比べてはるかに低い)、「企業の働き方改革は全然進んでいない」(日本は欧米主要国と比べると労働時間が長く、有給消化率も低い。労働時間も依然として長い)と課題を指摘した。

フランス・スウェーデンをお手本に「パパ大好き大作戦」

それでは、具体的にどのような政策が必要だと考えたのか。提言の中では、第1の柱として「働き方抜本改革法(新法)」の制定が挙げられた。主に下記の内容を行政機関・民間企業等が毎事業年度、男女別かつ採用区分ごとに公表することを義務化するというものだ。

・1人あたり平均所定外労働時間
・所定外労働時間が60時間を超えた者の割合
・所定外労働時間が80時間を超えた者の割合
・有給休暇の取得割合
・育児、介護休業取得割合
・男性と女性の就業継続期間の差
・男性と女性の賃金格差
・女性管理職割合

また、これらのデータベースは、規模別・事業別にランキングで表示すべきとしている。

「パパ大好き大作戦」のイメージ(厚生労働省「私たち世代が考える女性活躍推進のカタチ~『できること』でなく『すべきこと』を考える~(1417名の生の声から見えた課題と政策の方向性)」より)

さらに第2の柱として「パパ大好き大作戦」を提唱。主な内容は以下となっている。

・休業開始前手取り額の100%を保障する「パパ大好き休暇」(産後30日)の創設
→休暇取得が100%でない事業主に対し、事業主拠出金を引き上げる
・数回程度、育児休業の分割取得を可能とする
・上司の人事評価基準に「部下が育休を取得したか」や「年休を取得したか」が盛り込まれるよう、周知啓発を図る(まずは厚生労働省から始める)

これらの施策は、子育て先進国といわれるスウェーデンやフランスを参考にしたとのこと。フランスでは「パパ産休」(2週間)の取得率が約7割であること、スウェーデンでは男性の育児休業取得率が約8割で、給付率は休暇前給料の約8割であることなどを例として挙げている。

加えて「攻めの広報の展開」「厚労省モデルの横展開」も進めていくとしている。厚生労働省自らも、働き方改革を進めていくべきとしているが、特に注目したいのは「国会関連業務の見直し」だ。

国会対応では、前日の夕方以降に質問の事前通告があり、その後深夜~当日早朝にかけて対応せざるを得ないケースも多い。提言では、質問の通告時刻を公開し、残業・タクシー等のコストの「見える化」を行うことを推奨していた。また、議員事務所への質問趣旨の確認や政府内での答弁書案の作成・審査、答弁者への説明等について、自宅でメールや電話を活用して行うことを推奨することなどが挙げられた。

まず、厚生労働省が変わることはできるのか。そして、若手職員から出されたこの提言は、どこまで政策に反映されるのか。今後の動きに注目したい。