子どもどうしのケンカに親が口を出したことで、親どうしのケンカに発展するケースも少なくない。しかも当事者どうしだけで終わらず、LINEなどでママ友を巻き込み、大きなトラブルに発展するケースもある。そんな事態を防ぐにはどうすればよいのか。
子どもやママ友トラブルを多く解決してきたレイ法律事務所の高橋知典弁護士に、子どものトラブルへの正しい対応方法を聞いた。
相手の親に"直接話をしにいくこと"はNG
子どもどうしのトラブルがあったとき、直接相手の親に話をしに行くと、親どうしがこじれてしまうことも多い。高橋先生いわく、「相手の親に話をするということは、その子どもを少なからず非難するということ」。親どうしの信頼関係ができている場合はよいが、そうでなければ「どうして、あなたにそんなことを言われなくてはならないの?」と、反感を買ってしまうおそれもある。加害者の親から、「子どもの小さな問題なのに親が出てきた」という声を聞くことも少なくないそうだ。
多くの加害者の親は、まず自分の子どもに話を聞く。そのとき、子どもの話をしっかり判断できる能力があればいいが、わが子のわがままや言い訳を鵜呑みにし、「うちの子は悪くない」と思ってしまう親も一定数いるという。さらには「●●さんが急に乗り込んできて、いろいろ言われた」など、仲良しのママ友にLINEなどで広められ、周囲を含めたケンカに発展してしまうこともあるそうだ。
学校や幼稚園・保育園では、子どもどうしのケンカの解決には力を貸してくれるが、親どうしのトラブルには不干渉。そのため、親どうしがこじれてしまうと、解決はかなり難しくなる。
やるべきことは「子どもの話を受け止めること」
では、子どもにトラブルが起きたとき、親はどのような対応をすべきなのか。高橋先生によれば、まずは「子どもの話を聞いて受け止め、共感すること」が大切なのだという。子どもが「きちんと話を聞いてくれるんだ」と、親を信頼するからだ。
そのうえで、子どもの話を整理し、事実をしっかり把握するのがポイント。「言葉はひとつの証拠になる。ただ、注意点として、子どもはすごく雑に話す」と高橋先生。「子ども: たたかれた」「親: 誰に?」「子ども: えっとね、えっとね、●●ちゃん」。こんなシンプルなやりとりでも、まずは「本当かな?」と疑ってみる必要があるという。
さらに、高橋先生によれば、小さな子どもは誘導に引っかかりやすく、聞き取りがとても難しいのだとか。例えば、「食べた?」と聞けば「食べた」と答え、「食べてない?」と聞けば「食べてない」と答えてしまいがち。親としては子どもに寄り添いつつも、子どもの発言を冷静に判断する能力が求められる。
責め口調、感情的な言い方を避けよう
子どもから話を聞いたうえで、もし、親として、なんらかのアクションを起こすことが必要となった場合には、「学校や幼稚園・保育園の先生」に相談しよう。高橋先生によれば、その際、注意すべきことは「子どもの言葉をそのまま伝えないこと」だという。子どもの言葉を鵜呑みにして、それをそのまま伝えてしまうと、園や学校での実情とかけ離れすぎていることがあり、大げさな親だと思われかねないからだ。
「大ごとにしたくないなら、その旨を最初にきちんと伝えることも大切」と高橋先生。
・相手の親から謝罪がほしいわけではない
・トラブルはお互いさまで、一方ばかりをやめさせてくれと言うつもりもない
・一方で、子どもが●●を繰り返しされていると相談してきている
・親も見ているが、一応先生の耳にも入れてもらい、気をつけていてもらいたい
こういった要素を大切にして話すようにすれば、先生も事態をすんなり飲み込めるし、モンスターペアレントなどと思われることもないだろう。
一方でNGなのは、「学校側にも問題の責任がある」とか「どうにか解決してもらわないと困る」という気持ちから、責め口調や感情的な言い方になってしまうこと。せっかく話す機会を設けても、学校側が結局「何を言っているのかよく分からなかった」ということも、よくあるそうだ。高橋先生は、「一度でも被害者になったと思ったら、より丁寧に、より冷静に行動してもらったほうがよい」と念を押す。
日頃から、親子の信頼関係を築いておこう
「まずは子どもの意見をしっかり聞いて、事実を把握することが大切」。小さな子どもの話を正確に聞き取るには、時間のかかることも多いが、子どもにきちんと向かうことで、親子の信頼関係は築かれていく。
高学年になったとき、もっと深刻なトラブルが発生した場合に備えるためにも、子どもが幼いうちから綿密にコミュニケーションをとっておくことが、必要と言えそうだ。
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高橋知典 プロフィール
レイ法律事務所弁護士、第二東京弁護士会。自らもいじめを受けた経験から、子どもたちが健全に育つ環境を整える力になりたいと弁護士になる。法教育に力を入れており、いじめ、体罰、学校事故、停学・退学処分や、少年事件などの相談件数は年間300件以上の相談件数を誇っている。