運輸安全委員会は12月15日、2015年10月10日に鹿児島空港で発生したJALと新日本航空が滑走路上空で両機が接近した重大インシデントについて報告書を公表。原因は、新日本航空側が前を飛行していた別の飛行機を関連先行機と取り違えたため、その別の飛行機に続いて最終進入経路に進入し、後続するJAL側と接近したことによるものと推定されている。

JAL機(A機)と新日本航空機(B機)の状況(B機が管制官に対し、「Final traffic in sight(ファイナルの航空機を視認した)」と伝えた時の状況)

同件は2015年10月10日16時50分頃、JAL所属ボーイング式767-300型(JA8364)が鹿児島空港に向けて最終進入中、新日本航空所属ブリテン・ノーマン式BN-2B-20型(JA80CT)が左前下方から進入経路に割り込む形で接近してきたため、復行により回避した。鹿児島空港滑走路34進入端から約3nmの最終進入経路上で発生し、両機はその後、鹿児島空港に着陸。負傷者は出ていない。

管制官は、JAL機の後に新日本航空機を着陸させることを計画し、新日本航空機に対し関連先行機であるJAL機の型式および位置情報を伝えたが、新日本航空機の機長は、タワーからJAL機に関する2度目の交通情報が提供された約40秒後に滑走路34進入端から約1nmの最終進入経路上を飛行中のDHC-8型機を視認し、これを自機の関連先行機であると取り違え、JAL機の存在に気付かず最終進入経路へと進んだものと推定。管制官も、新日本航空機はJAL機を追従しているものと思い込んでいたものと考えられている。

DHC-8型機とJAL機は、その形状や大きさが明らかに異なる航空機であることから、B機の機長が視認したDHC-8型機を関連先行機であるJAL機と取り違えたのは、タワーから提供されていたJAL機に関する型式および位置の情報を正しく理解していなかったことによるものと考えられている。また、管制官が新日本航空機に「FOLLOW」を指示した際、着陸順位を伝えていなかったことが関与した可能性も考えられている。

再発防止策として、新日本航空は2015年12月より、同件の乗員に対して同重大インシデントに関する座学訓練および飛行訓練を、全乗員を対象として主にヒューマンエラーに関する事故事例等を交えた同インシデントに関する安全教育を実施。全乗員でヒューマンエラーおよびニアミス防止について討議し、管制官との交信において曖昧な伝達をしないこと、および視認した関連先行機の型式、位置などを具体的に応答することとした。また、同重大インシデントに関する項目(重大インシデントの振り返りと対策の再確認、型式ごとに1時間の飛行訓練)を定期訓練に加えた。

航空局が講じた措置として、同重大インシデントに関する情報共有および以下の業務に関する注意事項を全官署に周知し、管制官が適切に業務を実施していたとしても、同様の事例はいつでも発生する可能性があることを踏まえ、特にタワー業務においては引き続き航空機のより確実な視認、外部監視の徹底に努めることとした。

鹿児島空港事務所が講じた措置として、航空局が講じた措置に加え、操縦士に誤解を与えないよう、先行機に続く指示を発出する際は互いの位置関係から適切と思われる時期に関係航空機の交通情報を付して発出すること、および可能な限り詳細な情報を伝えることを再確認した。さらに、定期審査において管制指示および交通情報の発出時期や内容について確認を実施。また、管制官が毎年受ける定期的訓練に同重大インシデントの教訓を取り入れている。