冷たいものを食べた際や歯磨きをしているとき、ふいに歯がしみる感覚に陥った経験はないだろうか。一時的に痛むだけで、すぐに痛みが引いてしまうようならばその症状の原因は知覚過敏にあるのかもしれない。
今回はM.I.H.O.矯正歯科クリニックの今村美穂医師に知覚過敏の症状や原因などについて伺った。
痛みのカギは象牙細管
知覚過敏は、「冷たい(温かい)物を飲んだり食べたりする」「酸味の強い物を飲んだり食べたりする」「歯磨き時に歯ブラシの毛が歯に触れる」「口腔(こうくう)内に冷たい風が入る」「冷たい水でうがいをする」などのシチュエーション時に、一時的に歯がズキズキとしみて痛む症状を指す。
歯が痛む理由は、歯の神経「歯髄(しずい)」につながる「象牙細管(ぞうげさいかん)」の穴が露出し、そこに液体や冷風などの刺激物が流れ込むと歯髄(神経)が反応するためだ。
象牙細管は、歯の表面を守るエナメル質の内側にある象牙質と呼ばれる部分にある。そのさらに内部に歯髄があるため、歯は大まかに言えば外側からエナメル質、象牙質、歯髄の3層(歯根部は歯肉、セメント質、歯髄)から成り立っている。
このうち、歯髄に近い象牙質やセメント質を刺激すると歯髄内神経が反応して痛みを感じる。そのため、さまざまな原因で象牙質が露出されてしまうと、外部からの刺激が神経に伝達されやすくなり知覚過敏に陥るというメカニズムだ。
「知覚過敏になる原因は多岐にわたりますが、病的なものが原因でなる場合とそうでないものが原因でなる場合の2パターンに大きく分けられます」と今村医師は話す。それぞれのパターンの主な原因を知っておこう。
病的原因
歯周病
歯周病が進行すると歯肉の位置が少しずつ後退していき、歯の根元部分が露出する。この露出された部分はセメント質と呼ばれる薄い層で守られているが、すぐ内部が歯髄であるため、痛みを感じやすい。
虫歯
虫歯でエナメル質に大きな穴が開くと象牙質が露出されてしまい、それだけ神経に近づくため知覚過敏のリスクが上がる。今村医師は「デスクワークの多い方は何かと手が出やすいため間食が増えがちですが、日に何回も糖分の入ったコーヒーやおやつ、酸味の強い食品ばかり食べているとエナメル質表面は虫歯になりやすく、結果として知覚過敏を招きやすいです」と忠告する。