お部屋探しの際、賃貸物件に直接住まいへ立ち入ることができる「内見」。満足できるお部屋に住むためには重要なものですが「どこをチェックすればよいのかわからない」なんて方も多いのではないでしょうか?
とくに新社会人や新入生といった初めてお部屋を探す人が、1日で物件を決めなければいけない場合などには、なんとなく部屋の雰囲気を見て決めてしまうこともあるでしょう。しかし、住んでみてから困ったことになっても、すぐにまた引っ越すというわけにもいきません。
そこで、上手な内見をするコツを、住宅情報マガジン「すみかる」編集長の千歳紘史さんに教えていただきました。
事前に調べておきたいこと
――まず、内見する前の準備として、調べておいたほうがよいことはありますか?
「お部屋の周辺の商業施設や商店街の有無と営業時間ですね。営業時間が自分の生活時間帯に合っているかどうかが大切です。例えば、スーツを着ることの多い男性なら、ワイシャツをクリーニングに出すことも多いと思いますが、クリーニング屋が出勤前や帰りの時間に営業していないと、取りにいけなくて困りますよね。
あとは居住者層を調べてみましょう。例えば学生が多い、単身者が多いなど、自分に近い層だと住みやすく感じます。これは不動産屋さんに聞くのがよいでしょう。あとは、治安の情報などもインターネットで確認できるので調べておくと安心かもしれません」
内見時の持ち物
――次に内見する時に準備していくべき持ち物を教えてください。
・お部屋の寸法図面
「不動産屋さんが持っていることが多いので、あればもらいましょう」
・メジャー
「廊下の幅や収納の奥行きなどを測ります。内見時に窓の大きさを測っておけば、引越し当日までにカーテンを用意しておくこともできます」
・スマートフォン
「いつも持っている方が多いと思いますが、念のため。室内で電波が入るか確認するためと、室内の写真を撮っておくためです」
・温度計・湿度計
「屋外と比べて、極端に湿度が上がりやすい部屋は、結露しやすくカビが生えやすいのです」
・ビー玉
「部屋の傾きをチェックするために、あれば持って行くくらいのつもりで。傾いている場合、建物か地盤に問題があることもあります」
・メモ用紙、筆記用具
「こちらもいつも持っている方が多いとは思いますが、測った数値や気づいたことをメモするため、必ず持って行きましょう」
内見時に確認すべきこと
――これらの道具を持って、いざ内見! とはいえ、どんなところをチェックすべきなのでしょうか? 見落としがちなポイントも含め、詳しく教えてください。
「第一印象は大切です! 室内に入った時に、においやしめっぽさを感じるなら、よく覚えておきましょう。3分くらいすると、鼻がなれてしまいにおいや湿気はわからなくなってしまいます。次に気をつけてほしいのが、残置物です。エアコンや照明、ベランダの物干しなど、前に住んでいた人が置いていったもののことですが、もともとの設備でないものは、壊れた場合に大家さん負担で修理してもらえません。残置物なのか設備なのかわからないものは、内見の時にはっきりさせておきましょう」
以下、8つのポイントに分けて伺いました。
①玄関
「ブレーカーはたいてい玄関にありますね。何アンペアか確認しましょう。15~20アンペアだと、ドライヤーやエアコン、レンジなど熱源になる電化製品を複数使った時に、ブレーカーが落ちてしまうかもしれません。30アンペアあれば大丈夫でしょう」
②窓・ドア
「まず開け閉めして、たてつけが悪くないかチェックを。窓をいったん開けて閉めた時、外の音がちゃんと遮断されてシーンとするかにも気をつけましょう。これは防音性の確認になります。
また、網戸の有無も確認しましょう。築年数が古めの物件の高層階だと、網戸がついていない場合があります」
③壁・天井
「最上階で天井にしみがある場合は、雨漏りのあとかもしれません。壁紙に汚れや傷を見つけたら、クリーニング済みか、これからリフォームの予定があるのか聞いてみましょう。内見後にクリーニングやリフォームをする物件の場合は、入居前にクロスを貼り替えてくれることがあります。そうでない場合には、退去時に自分の居住期間にそうなったのではないことを証明するため、入居当日に写真を撮っておきましょう」
④収納
「開け閉めがスムーズにできるかを、必ずすべて確認しましょう。また、押し入れの四隅、洗面台やキッチン下の収納の隅に、カビのあとがないかを見ます。カビのあとがある場合、その物件は湿気がたまりやすい、結露しやすいという場合があります」
⑤水まわり
「立ち合いの不動産屋さんに声をかけてから、キッチン、シャワーなどの水まわりは全部、水を出してみましょう。とくにシャワーは水圧が低すぎないか確認を。フロアによっては水の勢いが弱すぎる場合があります」
⑥ベランダ
「隣の物件との距離、侵入経路になるような塀や屋根などがないかの確認をしましょう。騒音や、周囲からの視線なども気になります。要はカーテンを開けられる状況かということです」
⑦その他、室内で見ておきたいところ
・コンセントの位置と数
・インターネット用光ファイバー回線の有無
⑧物件の共有部分
「郵便受けに郵便物がたまっていないか、チラシが床に散らばっているなど、全体が散らかっていないかをチェックしましょう。ゴミ捨て場や駐輪場もきれいに使われているか確認を。散らかっている場合、マナーの悪い住人がいる可能性があります。管理会社や大家さんの目が行きとどいているかもわかります」
要チェックなポイント
――お部屋の周辺環境、とくに交通機関や施設などについて、チェックすべきポイントを教えてください。
「最寄り駅の電車の本数、時間、混雑状況、終電、始発駅か(座りやすいかどうか)、急行停車駅かを確認しておきましょう。駅までの道に踏み切りがあるか、ある場合は“開かずの踏み切り”でないかもチェックを。そういったものがあると、駅までの時間が予想よりかかってしまうかもしれません。意外とバスが便利なこともあるので、最寄りのバス停や本数も見ておきましょう。スーパー、コンビニ、病院、ドラッグストア、郵便局や銀行、レンタルショップ、役所の出張所、クリーニング屋など自分が利用するであろう施設が、その街にあるか、そしてその営業時間と自分の生活時間帯が合っているかを確認することをおすすめします」
――なるほど。施設が近くにあっても、営業時間が自分がいけない時間だと困りますね。
「もちろん、駅からお部屋まで歩いてみるのはよい方法です。商店街の有無などや、人通りがあるか、人通りが少ない場合は街灯の有無をチェックします。歩いてみる時間がない時には、グーグルマップのストリートビューを見たり、自転車に乗って移動したりしたい場合は坂道の勾配をチェックできるサイトを見てみるとよいでしょう。坂道ばかりだとつらいですからね」
そのほか気をつけたいこと
――他に気をつけたほうがよいことがありましたら、アドバイスをお願いします。
「お部屋の面している道路が一方通行か、トラックが入れる道かを確認しておきましょう。トラックの入れない道で、物件のすぐそばに車を止められなかった場合、あとで引越し業者から追加費用を要求されることもあります」
住み始めてから困ったことに気づいても、なかなかすぐに引っ越すわけにはいかないからこそ、内見の時になるべくチェックしておくべきです。これらのポイントを参考に、満足できるお部屋を見つけたいものですね。
《取材協力》
千歳紘史(ちとせこうし)
日本最大級の不動産ポータルサイトのウェブサービス開発を担当。その後独立し、不動産に関するウェブマーケティングを支援する株式会社理想ラボを設立。また、住生活に関する様々な事業を展開するiYell株式会社の執行役員でもあり、お部屋探しや引越しなど「住まい」に関わる数々の知識を活かして、同社が運営する住宅情報マガジン「すみかる」の編集長も務める。
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