既報の通り、エムエスアイコンピュータージャパンは、VR対応のバックパック型PC「VR One」を法人向けに発売した。これに合わせて、メディア向けの体験会が開催されたので、こちらの内容も含め、改めて「VR One」を紹介する。
「VR One」は、VRシステムでネックになりやすいケーブルを気にせず、ゲームプレイやコンテンツ視聴が可能なバックパック型のPCで、HTCとの協業により、VRヘッドセット「Vive」に最適化。本体の上部に接続インタフェースを配置し、VRヘッドセットと接続しやすい設計を採用するほか、取り外し可能な2基のバッテリにより、Viveをフルに動作させた状態で最大1.5時間のバッテリ駆動を実現する。
「VR One」のプロトタイプとなる「Backpack PC」が登場したのが、2016年6月の「COMPUTEX TAIPEI 2016」。このときからすでに、ケーブルの取り回しを気にせずにVRコンテンツを楽しめるというコンセプトは実現していたものの、筐体は金属製で重量が約5kgと少々重め、なおかつ厚みがあった。
続く、2016年9月に「VR One」として正式に発表。日本国内でも東京ゲームショウで披露された。プロトタイプである「Backpack PC」をブラッシュアップし、40%の薄型化を実現したほか、重量はバッテリ込で3.6kgと30%ほどの軽量化に成功した。
11月25日に法人向けに販売が開始されたが、COMPUTEX TAIPEI 2016や東京ゲームショウの段階から問い合わせが多く、予想を大きく上回る受注があったという。このため、年内いっぱいは法人向けのみの提供となり、個人向けは2017年1月からを予定とのこと。担当者によると、アミューズメント施設や企業の開発部門、研究施設など幅広いところから引き合いがあったという。それも検証用としてだけではなく、事業向けとしてかなり大口のものもあり、近いうちに「VR One」を活用したアトラクションやソリューションがお目見えするかもしれない。
通常、VRの体験というとギターのシールドを持つローディのように、プレイヤーの後ろにケーブルを持って絡まないようにする係の人がいて、ケーブルを意識した動きとなってしまうのだが「VR One」だと自由に動ける |
今回の体験会では基本的に、東京ゲームショウで展示されたものと変わらないが、VRヘッドセットと接続するためのケーブルが、ゲームショウでは通常のPCと接続する用の長いものだったが、短いものに変更されている。
改めて、製品版のスペックをおさらいしておくと、CPUがIntel Core i7-6820HK(2.7GHz)、メモリがDDR4-2400 32GB(16GB×2)、ストレージが512GB M.2 SSD(NVMe/PCIe 3.0x4)、OSがWindows 10 Pro 64bit。通信機能はIEEE802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN、Bluetooth 4.1。インタフェースは、USB 3.0×4、HDMI×1、MiniDisplayPort×1、Thunderbolt 3×1、マイク/ヘッドホンなど。
ストレージとして、512GB M.2 SSD(NVMe/PCIe 3.0x4)が標準で搭載されているが、このほかにさらに1基のM.2スロットが設けられているという。ユーザーが、SSDを換装したり、空いているM.2スロットに増設することは、物理的に可能だが、MSI製ノートPCと同様に分解した段階で保証が受けられなくなる。なお、MSI製ノートPCでは「認定サポート店」では、保証期間を維持したままカスタマイズが可能なプログラムを用意しているが、「VR One」でも同様のプログラムを用意するかは検討中とのことだった。
また、本体に装着されている2基のバッテリはホットスワップに対応し、駆動中に交換が可能だ。ただし、2基のうち1基を外した状態、あるいは1基のバッテリを使い切ってしまうと、プロセッサの動作クロックが落ち、VRヘッドセット側のフレームレートも著しく落ちてしまうという。いまのところは、本体にバッテリを装着し、ACアダプタ経由で充電を行うが、年内にも別売りでバッテリチャージャーを用意。急速充電とバッテリの劣化を抑える通常充電に対応する。また、バッテリ単体での販売も行うとしている。