晩産化が進む日本。厚生労働省によれば、平成27年度、第1子出生時の母親の平均年齢は30.7歳と過去最高齢となっている。
これに伴い子どもをもう1人欲しいが、さまざまな理由からためらってしまう"2人目の壁"が夫婦の前に高く立ちはだかっているという。その実態について、2013年から夫婦の出産に関する意識について調査している一般財団法人1more Baby応援団専務理事の秋山 開氏に聞いた。
"経済的な理由"が1位ではあるけれど……
「産後の育休期間を経て、無事に職場復帰を果たした夫婦の多くが、数年以内に直面するのが、第2子以降の出産への迷いです」と秋山氏。同財団による最新の「夫婦の出産意識調査2016」では、「理想は子どもが2人以上欲しい」夫婦が過去最高の81.1%となった一方で、実に73.5%の夫婦が「2人目の壁が存在する」と回答し、理想と相反する現実が見える。
2人目の壁の要因は、全体で見ると「経済的な理由」(84.4%)が最多となっている。しかし、フルタイム勤務ママの場合、産休の取得しやすさや職場復帰などの「仕事上の理由」(58.3%)、自身や配偶者の「年齢的な理由」(50.8%)を要因としてあげる人が多い。
秋山氏は「最大の理由が経済的なことなのにも関わらず、年収と子どもの数は単純に比例しない」と指摘。年収が高く、経済的な余裕のある夫婦では、仕事上、年齢上の理由が大きく影響していると考えられるのだ。
制度はあっても、周囲の目が気になる
2人目の壁の大きな要因のひとつである「仕事上の理由」を具体的に探ると、「仕事が忙しく両立する余裕がない」「周囲(上司、同僚、部下など)の目が気になり、出産・育児休暇を取りにくい」という項目が高くなっている。
復帰後、子どもの急な発熱による早退時などに、同僚の視線を冷たく感じたり、迷惑をかけていないか気になったりする人が多いそうだ。企業の育児支援制度は充実してきているが、利用する風土が伴わず、活用が困難な様子がうかがえる。
最近は、自身もプライベートも楽しみながら、部下のワークライフバランス(仕事と生活の両立)やキャリアに配慮し、業績を上げていく上司"イクボス"を育成し、職場の風土を変えていこうとする企業も増えた。しかし、まだまだ発展途上であることには変わりないようだ。
いい意味での開き直りも必要
このような状況で、2人目出産を目指す夫婦は何を心がけたらいいのだろうか。秋山氏は、「日ごろから2人目が欲しいことや、実家をはじめとする家族のサポートの有無、保育園の状況などを周りに伝え意思疎通しておくことが大事」と話した。同僚のピンチには快くサポートをし、信頼関係をつくっておくことも、大切だという。
子育てに理解のある上司が周りに少ないこともあるだろうし、いくら準備を重ねてもお金や仕事、保育園のことなど全ての不安はなかなか解決しないこともあるだろう。そんな中、2人目の壁を乗り越えた夫婦にインタビューを重ねて感じたのは、「2人目が欲しいのだから何とかしよう、といい意味で"開き直り"をしている家庭が多い」ということだそうだ。
「夫婦の意識調査2016」では、さまざまな迷いや不安を持ちながらも、2人以上出産した夫婦に、「家庭の幸福感の観点から満足しているか?」という質問もしているが、実に98.0%の夫婦が「満足」と回答している。過去4年間の調査を通して、この満足度の数値はほぼ変わらないという。
「答えの見えない将来への漠然とした不安感は残りながらも、子どもが増えたことで幸福感を抱いている人がこれだけいる」と秋山氏。社会全体で子育てしながら働きやすい環境づくりに取り組む必要があるのはもちろん、少しでも2人目出産を考えているのであれば、これらの調査をもとに、夫婦で話し合う機会を持ってみてもいいかもしれない。
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秋山開 プロフィール
企業のCSR活動として少子化問題をとらえ、理想の数だけ子どもをうめる社会を実現するために2013年に発足した一般財団法人1more Baby応援団の専務理事。事業の企画・運営の他、男性の育児参画や女性活躍推進、子育て支援等に関する情報や調査を発信、シンポジウム等を開催している。2児の父。共著に『なぜ、あの家族は2人目の壁を乗り越えられたのか? ママ・パパ一〇四五人に聞いた本当のコト』(プレジデント社)、『こども大国ニッポンのつくりかた』(木楽舎)がある。