1日に発売したワコムの「Bamboo Slate」は、紙の上に書いた文字や図をデジタル化し、編集・共有することができるデジタル文具だ。2015年9月に発表した、タブレットや名刺などを挟めるガジェットポケット一体型スマートフォリオ「Bamboo Spark」の追加モデルで、スレート型であることが特徴。前編では外観やデザインを紹介したが、後編では実際の使い勝手をみていこう。

A5サイズの「Bamboo Slate small」

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使い勝手を紹介する前に、まずはBamboo Slateで何ができるか改めて確認しておこう。本体の上に紙をセットし、専用のペンで書いたメモを専用アプリと組み合わせ、手書きした内容をデジタル化できる――というのが、この製品でできることだ。

前編でも紹介したように、Bamboo Slateにはlargeとsmallの2種類のサイズがある。largeの対応用紙はA4(210×297mm)、smallの対応サイズはA5(140×216mm)。紙をパッドに挟み込むスペースが用意されており、レポート用紙やメモ用紙など、上下にめくれるメモだと挟みやすい。とはいえ、ノートのように左右にめくる用紙がNGかというとそんなことはなく、最大8mmまでの厚さであればデータを取得できるため、ノートを(挟み込まず)そのまま上に載せて使うという手が使える。

A5ノートを載せたBamboo Slate small(左)と、A4レポート用紙を載せたBamboo Slate large(右)

紙を挟み込むスペースが用意されている

専用のボールペン。読み取りは電磁誘導方式。1,024段階の筆圧検知に対応するが、ボールペンなので、太字・細字の筆圧の差分はわかりにくいかもしれない

転送されたデータは、iOS/Android向けの専用アプリ「Wacom Inkspace アプリ」(以下、Inkspaceアプリ)で読み込むことで、書いた内容を端末側で表示/編集できるようになる。データは最大100ページまでなら本体内にも保存可能。端末との接続はBluetoothで、本体の同期ボタンを押すことで、記入した分が随時端末に転送される。

Inkspaceアプリでは最初に、接続するBambooシリーズへのデータ転送方法が紹介される

デジタル化されたデータは、OneNoteやDropbox、Evernoteとの連携やJPEG、PNGなどへのエクスポートが行える。また、ワコムのクラウドサービス「Inkspace」と紐付けると、データを自動同期できるようになる。

Inkspaceは無料版と月額300円の有料版がある。上記の機能は無料版でも使えるが、有料版では手書き文字のリッチテキスト形式変換や、ベクター形式への変換機能なども使える。特に活躍しそうなテキスト変換機能は無料版でも欲しいところだ。

実際に「Bamboo Slate」に書き込んでみた

さて、前置きが長くなったが、実際にBamboo Slateを使ってみた感想は、一言で言うと「便利」だった。

実際に「Bamboo Slate」に書いてみる

まずは書き味。これは普通のボールペンと同じように使用できた。ペンの形状は若干太めだが、一般的な太さ、サイズと言っていいだろう。ボールペンは日常使いするものなので好みが分かれるところではあるが、個人的には指が触れる部分にすべり止めのゴムが欲しかったので、ペンに巻けるようなアタッチメントなどが用意されていても良いと思った。

さて、今回は使用したのがA5サイズのsmallだったため、小型の第2世代「iPad mini」とBamboo Slate smallを接続してみた。正直なところ、データはBluetooth転送ということで、(無線LANに比べ)ある程度の遅延や読み込みの遅さが生じるのではないかと考えていたが、非常にスムーズ。また、読み取り精度も非常に高い。紙に描いた内容の文字、字間、レイアウトが、遜色なくデジタル化された印象だ。

付属の純正ノートでも5mm程度の厚さがあったが、スムーズにデジタル化された

筆者はわりと紙でメモを取る方だ。取材でもPCではなく手書きでメモを取り、打ち合わせでも内容を紙に書いて紹介し、レイアウトを描いて説明する。その日に行う予定のタスクですら、デスクの上に置いてある裏紙やふせんにメモして管理している。

そんな生活の中で使うBamboo Slateは、書いたメモを単に画像化するのではなく、「デジタル化」する点が特に便利だった。Inkspaceアプリでは、書いた順に内容を表示/削除したり、アプリ上で手書きし、新しい情報を追加できたりする。また、上半分だけ書いて一度保存したのち、下半分を書き足して保存すると、アプリ上では別々のページとして、合計2ページの表示になるわけだが、複数ページを「統合」して、紙に書いた状態と同じように1ページにまとめることもできる。逆に、1ページとして書いた内容を、アプリ上で「分割」することも可能だ。

記入中のメモをiPad miniに転送し表示したところ。この後記入した3つ目の項目は、独立した2ページ目としてデータ化されたが、後からこのページに統合できた

手書きのアイデア出しや、ふせんでメモを取る時に、この統合/分割機能は非常に役立った。特にふせんにメモを取った場合は、メモする度に転送していたため、各情報が新規データとして細切れでInkspaceアプリに追加されていたが、後から統合することで1ページに収められた。

また、裏紙やふせんは紛失しやすい。筆者は「今日1日だけ確認できれば良い」という使い方で、メモ用紙に雑多に予定や情報を書き込むため、後から何を書いたか把握できなくなることがある。このため用が足りたメモ用紙でも一定期間取っておくことがあるのだが、Bamboo Slate試用中はこの作業が不要になった(そもそも筆者がズボラなだけなのだが……)。

Bamboo Slateは他のワコム製品と違い、イラストやスケッチ向きではないかもしれないが、日常生活にコミットした使用法が期待できそうな製品だ。今回は短期間の使用だったが、長期間使えばまた他の活用法も生まれてくるだろう。