ルフトハンザドイツ航空はこのほど、ブリュッセル航空を完全子会社にする方針を発表。すでに完全子会社であるスイス インターナショナル エアラインズ(SWISS)とオーストリア航空とともにネットワークを拡大させる。欧州航空大手の同社が今後、どのような戦略をとっていくのか、2012年から共同事業をスタートさせたANAとの取り組みや、ユーロウィングスに統合させるというLCCの展望も含め、CCOのイェンス・ビショフ氏に航空会社創業経験もある航空ビジネスアドバイザーの武藤康史氏が戦略に迫った。

ルフトハンザは日本的

武藤氏: まずは、日本市場を含めた最近の課題や戦略についてお聞かせください。

イェンス・ビショフCCO。2011年にルフトハンザ ドイツ航空の取締役、2013年にはグローバルにおける販売組織や収益管理、製品開発、マーケティング活動を統括するCCOに就任。欧州最大規模のマイレージプログラム「Miles & More」も担当し、80以上の国・地域と190カ所以上の空港におけるルフトハンザの販売活動について責任を負う。2005~2006年には、SWISSとのグループ統合を成功に導いた

ビショフCCO: 広い視点から言いますと、まず、日本市場はルフトハンザグループのグローバル戦略トップ5に入るほど、市場的にも国的にも非常に重要な地です。もちろん、アメリカや中国など他にも大きな市場はありますが、日本は非常に重要であることには変わりはありません。そのため、他の航空会社と提携しながら拡大を続けています。

だからこそ、1961年に羽田=フランクフルト線からスタートし、それを伊丹・名古屋に広げていきました。ルフトハンザの直行便に関しましては現在、羽田=フランクフルト/ミュンヘン線、成田/関空/中部=フランクフルト線を運航しています。ルフトハンザグループ全体では日本路線をチューリッヒ/フランクフルト/ミュンヘンなどで週30便程度、ANAとのJV(ジョイントベンチャー)で週49便程度、全体で週80便程度を運航しています。

日本=欧州間における乗客ベースのシェアでは、ルフトハンザグループだけだと15%くらいですが、ANAとのJVを含めると27%を占めています。日本において、日本=欧州をつなぐ最大キャリアであるという意味でも、戦略的に重要であるということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

武藤康史氏。航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上におよぶ航空会社経験をもとに国内外のアビエーション関係のビジネス創造を手がけ、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍している。スターフライヤー創業時のはなしは「航空会社のつくりかた」を参照

武藤氏: 現在、日本路線のルフトハンザブランド便において日本人が占めるマーケティングシェアはどのくらいでしょうか。

ビショフCCO: 日本人乗客のシェアは非常に高く、われわれがもつ座席の半分以上は日本人の方に利用いただいています。その意味でも、ルフトハンザブランドは日本人の方々にとっても魅力的なブランドとして認知いただけていると感じています。

お客さまがわれわれを捉える以上に、われわれは日本的(more japanese)だと考えています。それは機上・地上ともにです。例えば、日本的な感覚のサービス、飲みものや食べものもそうですが、フライトアテンダントにも日本人スタッフはたくさんいますし、エンタメに関しましてもさまざまな日本語のサービスがあります。加えて、例えばフランクルトから他の欧州に行く場合も、その先々で旅のサポートをする日本人スタッフが控えています。

日本らしいサービスの心地よさというのも提供するとともに、日本のお客さまにおいては、東京でも大阪でも名古屋でも、ルフトハンザを利用いただいた時点で欧州にいるような体験ができる、というのもひとつの特長ではないでしょうか。

武藤氏: 個人的な感覚ではありますが、いわゆるフィーダーポイントを考えると、パリやロンドンとかは日本からはpoint to pointの路線という認識が高いと思います。一方、ドイツはフランクフルトやミュンヘン、デュッセルドルフなど主要地点はそれなりのpoint to point需要もあるものの、さらにそこから先の目的地に行くための起点として機能しているという状況もあります。ルフトハンザの強みとして、point to point以上にその先のほとんどの都市に飛んで行けるから、という旅客の認識があるからではないでしょうか。

ビショフCCO: その通りだと思います。われわれは、いろいろな路線を組み合わせられることがひとつの魅力です。例えば、ミュンヘン自体もpoint to pointで滞在するお客さまもたくさんいらっしゃいますが、そこからまたたくさんの場所を選ぶこともできます。われわれは欧州の中でも最大のネットワークをもっており、そこからさらに、フランス、スペイン、イタリアなどを選択できます。大規模ネットワークで便利な接続性を確保しており、フライトの頻度も高いです。リスボンとかパリとかですが、特にパリ=フランクフルト線に関しては、週10便以上と頻度が高いです。

LCC事業ではローコストではなくバリューを提供

武藤氏: グループ内には、ジャーマンウイングスとユーロウイングスというLCCもありますよね。両社も含めたルフトハンザグループのフィーダー戦略を教えてください。

グループ内のLCCは今後、ユーロウイングスへ集約させていく

ビショフCCO: LCC子会社については、これらがpoint to pointのローコストキャリアであることと、ルフトハンザがネットワークキャリアであることを両立させることで非常にLCCとしてのメリットを得られます。その意味で、両社はコネクションエアラインとしての役割を担っています。

フランクフルトとミュンヘンに関しては、大きなハブとして提供しているわけですが、ジャーマンウイングスやユーロウイングスはハブとしてそれらを利用するのではなく、運航をユーロウイングスへ統合しながら、欧州各地へのpoint to pointをメインにしていくことになります。例外として、フランクフルト=ミュンヘン/ハンブルグ/バルセロナ/デュッセルドルフ/シュトゥットガルト/ローマ/ベルリン線などは、ユーロウイングスが確保していきます。

武藤氏: そうすると、ルフトハンザ運航便だけを使って日本が欧州に行く乗客としては、そうした低運賃のメリットを享受できないのではないでしょうか。

ビショフCCO: いえ、そんなことはありません。ハンブルグ=バルセロナ線に関してはユーロウイングスが提供していますが、われわれは「いわゆるローコストではなく、バリューを提供している」と認識しています。質の高いサービスでバリューを提供していますが、もちろん、ローコストのメリットも組み込みながら提供しています。予約が面倒という方には、予約なしでもご利用いただけるというビジネスモデルもあります。

武藤氏: ANAを始めとする、航空会社間のさまざまな提携について教えてください。