今回は、超広角ズームながらF2.8の明るさとVC(手ブレ補正)付きのハイスペックレンズ、タムロンの「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」である。キヤノンEFマウント用、ニコンFマウント用、ソニーAマウント用がラインナップされており、2016年11月中旬の大手量販店価格は116,000円程度だ(ポイントバック分を除く)。
超広角ズームといえば、キヤノンの「EF11-24mm F4L USM」や、最近リニューアルされたシグマの「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM|Art」などがあるが、極端なパースが付くため扱いが難しく、何より高価だ。似たスペックのシグマ「SIGMA 15-30mm F3.5-4.5 EX DG ASPHERICAL」は、以前使っていたが歪曲収差にクセがあり、高画素機で使うには少々不満があった。また、キヤノン「EF16-35mm F4L IS USM」は少し暗めだが手ブレ補正付きで、今回取り上げる「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」と実勢価格が近く、このへんが実質的なライバルといえるだろう。
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1mmの差
タムロン「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」とキヤノン「EF16-35mm F4L IS USM」を撮り比べてみると、広角端の15mmと16mmの画角差はさほどないように感じる。ただ、足場が限られている風景などで、「あと少し入れたい」ときは大きな差になるだろう。
「EOS 5Ds R」+「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」 |
「EOS 5Ds R」+「EF16-35mm F4L IS USM」 |
中心部はどちらもシャープだが、周辺部はタムロンのほうが少し倍率収差が目立つ傾向が見られる |
両レンズとも、広角側での歪曲収差は良く補正されている。「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」の標準側では、わずかに糸巻き型収差が出るものの、普通の被写体では気づかない程度だろう。
「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」は開放F2.8通しという絶対的なアドバンテージがあり、実勢価格も安い。一方の「EF16-35mm F4L IS USM」は約500g軽く、携行性が良いので悩むところだ
質感、使い勝手
レンズのボディは樹脂製だが、安っぽい感じはない。外形が太く、1,100gという堂々たる重さの反面、ボディ(EOS 5Ds R)に付けるとバランスが良く持ちやすい。一体型の花形フードは2重の凝った構造だ。遮光というより、物理的な衝撃から鏡胴を守る意味合いが強く、ガタつきはまったくない。
ガラスモールドの巨大な前玉が張り出ているため、フィルターなどは使えない。レンズ前面には防汚コートが施されており、今回の試用でちょっとだけ水滴が付いたシーンがあったが、クリーニングペーパーで吸い取るだけで跡も残らずきれいになった。
マウント部の防塵防滴ゴムシーリングは、サードパーティ製の高級レンズではもはや常識になってきた。細かい点だが、レンズ取り付け用の赤いマークは、薄暗いシーンでもとても見やすい。
AFは速くはないが、実用上は十分。VCは手持ち撮影の範囲を広げてくれる。AF、VCともに静粛で、VCは無音といっても良いくらいだ(「EF16-35mm F4L IS USM」は起動時に音がする)。
EOS 5Ds R・15mm・1/125秒・f8・ISO1000 |
EOS 5Ds R・30mm・1/125秒・f8・ISO1000 |
同じ被写体でも15mm(写真上)では形が強調され、30mm(写真下)ではより自然な感じになる |
薄暗い室内でのVCは心強い(上の作例)。かつてフィルム時代は、「1/焦点距離」のシャッタースピードが手ブレの限界とされたが、デジタル高画素が標準の現代、さらに2段分ぐらい速いシャッターを切らないブレてしまう。しかし、VCを使いしっかり構えれば、1/焦点距離のシャッタースピードでブレなかった。
EOS 5Ds R・15mm・1/60秒・f7.1・ISO2500 |
EOS 5Ds R・15mm・1/25秒・f5.6・ISO1600 |
狭くて三脚が立てられない室内や、三脚の使用が禁止されている場所でも、積極的に手持ちで撮影できる |
EOS 5Ds R・15mm・1/200秒・f13・ISO640 |
「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD」は、とにかく明るいf値とVCで、積極的に手持ち撮影したくなるレンズである。コストパフォーマンスも最高だが(絶対値としての価格はともかく)、重くて大きいのが玉にキズ。ボディに付けるとバランスが良くて気にならないのだが、バッグに入っているとズッシリ存在感がある。なら思い切って、このレンズ一本で日帰りの風景撮影というのも一興だろう。