その道の技を見て・聞いて・体験できるのみならず、限定グルメも楽しめてお土産までもらえる。そんな工場見学は大人も子どもも大好きだ。ただ、工場はアクセスが不便なところにあったり、土日はやっていなかったりすることも多いもの。今回紹介するのは、都内から日帰りも可能で最寄り駅から徒歩10分以内。土日も開催しており、そして無料ときている。そんな、「ヤマサ醤油工場見学」を紹介しよう。
近年では外国人の見学者も
ヤマサ醤油工場は千葉県銚子市にあり、最寄り駅はJR東日本「銚子駅」または銚子電気鉄道「仲ノ町駅」となる。都内から行くなら、東京駅=銚子駅を行く特急「しおさい」で約2時間。十分、日帰り圏内だ。東京ドーム4つ分の広さにもなる敷地内に第1工場と第2工場があり、工場に入るとすでに、醤油のいい香りが周囲に漂っている。
工場見学は9:00~11:00と13:00~15:00に実施しており、各回約50分(映画上映約20分および工場見学約30分)。ただし、土日曜日・祝日やゴールデンウィーク、お盆の休業日は工場が休みとなるため、映画上映のみ(約20分)となる。WEB予約は見学日の3日前までとなるが、空きがあれば当日の電話予約にも対応している。2016年4月には、一般の人が予約なしでも利用できる「しょうゆ味わい体験館」も新設。最近では外国人の見学も増えているという。
醤油づくりの3つのポイント
工場見学はまず、ヤマサ醤油の歴史や醤油の作り方などを伝える映画からスタート。醤油というと大豆の印象が強いかもしれないが、実は小麦も使用されている。そこにヤマサ醤油の命とも言える種麹(こうじ)「ヤマサ菌」を加え、3日間寝かせて麹をつくる。できた麹に塩水を加えた「もろみ」を発酵・熟成させるのだが、この工程は約半年もかかるとのこと。
それから布でもろみを包んで絞ったものが「生しょうゆ」。これに「火入れ」という工程で熱を加え、香りや色を整える。火入れが終わった醤油は検査員によってチェックされ、成田工場にて詰められた後に全国へ配送される。醤油製造の工程は昔より、「一麹(きく)、二櫂(かい、櫂棒でのかくはん)、三火入れ」と言われているという。ちなみに、もろみを絞って残った醤油粕(かす)は家畜の餌に使われている。
映画の後は、いよいよ工場見学へ。まずは工場の中心に位置している巨大な円柱形の建物「原料サイロ」を紹介。高さ20mにもなるサイロの中には、醤油の原料である大豆と小麦が詰まっている。ひとつのサイロには200t~500tの原料が入っているようだが、工場では月40万Lの醤油が造られているため、ひとつのサイロは大体1週間で空になるという。
余談だが、濃口醤油を1L作る場合、大豆と小麦は同じ180g、食塩は160gが使われている。醤油は大きく分けると、濃口醤油と淡口醤油、たまり醤油、白醤油、再仕込み醤油の5種類ある。濃口醤油を標準とすると、淡口醤油は塩分を高めに、たまり醤油はほぼ大豆で、白醤油はほぼ小麦で、再仕込み醤油は塩水ではなく醤油で、それぞれ仕込むという違いがあるそうだ。
"醤油蔵"の中で疑似体験も!?
続いては麹室(むろ)へ。蒸した大豆と炒(い)って砕いた小麦、そして、ヤマサ菌を加え、麹は3日寝かせる。麹菌は成長すると発熱するため、スクリューで麹をほぐして熱をとり、成長を促す。麹は2日目には麹菌の菌糸が伸びて白みを、3日目には麹菌に胞子が付いて黄みを帯びる。
麹の秘密が分かったところで、仕込み蔵に移動。ここには、醤油のもととなるもろみの入ったタンクが並んでいる。仕込みは約半年かけて行うが、特に発酵が活発になる1カ月目であればぷくぷくと発酵が進んでいる様子が目でもしっかり把握できる。
この時の発酵・熟成を"体験"できるのが、工場見学ツアーの最後にある「タップトーク」だ。直径6mの桶をイメージしたスペースの中に入り、もろみから醤油になるまでの変化を映像と音で楽しめる。タップトークで使われている音は、実際に発酵中の蔵から録音されたもので、ぷくぷくと発酵が進む様子を蔵の中で疑似体験できる。完成した醤油の映像で蔵が満たされると、足の動きに合わせて醤油の波紋が投影される。この不思議な感覚は、大人もちょっと楽しくなってしまうだろう。
タップトークで工場見学は終了。お土産として、卓上用の醤油がプレゼントされるのもまたうれしいところ。
見学が終わったら、しょうゆ味わい体験館へ。ここには、入り口にあった看板の"あのグルメ"が楽しめる。続いては、そんな体験館の中を紹介しよう。