ドイツでガソリン車の販売が禁止になる可能性が出てきた。同国の連邦参議院が、2030年までに内燃機関(エンジン)を動力源とする自動車を代替するという決議を採択したもので、この方針をドイツ政府が採用するかどうかが今後の焦点となる。ドイツから欧州へと脱ガソリンの波紋が広がれば、ディーゼルから電動へ、エコカーの次世代化は一気に進展する可能性がある。日本にはどのような影響があるのだろうか。
アウディが提示した次世代エコカーの在り方
5年前の2011年初秋、アウディが催した「アーバン・フューチャー・イニシアチブ・サミット(Urban Future Initiative Summit)」では、2030年の未来都市を題材に、都市の住み方と、自動車の行方が論議された。2030年には世界人口が85億人に達すると予想される中、国際連合が世界人口の6割が大都市に住むようになると推計したことを受け、たとえば東京のような1,000万人都市で、どのような自動車が人々の役に立ち、求められるのかを検証しようというわけだ。
それを受け、直後のドイツモーターショーで提示された一例が、「アウディA2コンセプト」と呼ばれる車両である。日本の5ナンバーサイズのコンパクトカーであり、中身は電気自動車(EV)、なおかつ自動運転を想定していた。こうすることにより、東京都内の平均速度が時速20キロメートル以下とされることを踏まえ、大都市において自動車の利便性が損なわれるような状況から脱出し、自動車で移動する意義や価値を持続させようと模索しているのである。
国民の自動車というフォルクスワーゲンのような車種であれば、単に経済的なコンパクトカーでも事足りるかもしれない。だが、プレミアムブランドを自認するアウディに、どのような存在価値が残されるのかとの危機意識もあったはずだ。
“自動車の存在意義”が危機感の根本に
なぜ、そこまで彼らが危機感を覚えるのかといえば、ヨーロッパ各国の主要都市は、100万人規模におよぶ大都市が数えるほどしかなく、ドイツなら、ベルリン、ハンブルグ、ケルン、ミュンヘンの4都市しかない。しかも最大のベルリンで350万人だ。イギリスは、ロンドンとバーミンガムの2都市。フランスはパリだけで、わずか220万人。それは名古屋市ほどの規模だ。これに対し、日本は政令指定都市を中心に12都市も100万人規模の都会がある。
しかも東京を例にすれば、公共交通機関が発達し、運賃は大阪や名古屋と比べても安い。合理性を重んじるヨーロッパの人たちが東京に来てみれば、自動車に乗る意味を見いだせなくなるのである。