榎並氏が説明した後は、AWSを活用したIoTツールを提供する企業3社から説明がなされた。
トップバッターは、武州工業で代表取締役を務める林英夫氏だ。同社は「自動車用金属加工部品」「板金、プレス、樹脂加工」「自動制御機械製作」「医療・介護機器製作」などを行う製造業だ。
林氏は「同社ではこうした多岐にわたる業務を160人という少ない人数で小さなラインを連携する形で進めていることから、一人ひとりが役割を持って、会社の方針にベクトルを合わせて組織として進むことを奉仕としている」と述べた。それを支援する仕組みとして、「BIMMS」というツールを活用しているという。
BIMMSはAWSのクラウドサービス上で稼働しており、棚卸しを切り口に「倉庫在庫管理」「生産実績管理」「工程不良管理」など、日々決算ができる仕組みを提供する。
BIMMSは棚卸しに着目したシステムとなっているため、さまざまな業務が有機的につながっているから、入力内容が少なくてもさまざまな切り口で分析ができるという。林氏はBIMMSを「社内にある、たくさんの『気づき』を生むことができるシステム。気づくことで社員の自律を進めることができ、人手を使い分けることが可能になる。これは中小企業の共通の課題」と述べた。
このように、BIMMSは同社だけの課題を解決するにとどまらず、中小製造業にとって普遍的な課題を解決できることから、「BIMMS on AWSデータ収集ツール」として2017年3月から提供を開始する予定だ。
次に話をしたのは、スタイルズで代表取締役社長を務める梶原稔尚氏だ。同社はシステムの開発から運用まで手がけるITベンダーで、IoT関連のサービスとして、IoT/GPSトラッキング・プラットフォーム「Trackrr.io」を提供している。
同サービスのSDKをデバイスに組み込むことで、そのデバイスからGPSデータを収集して、データを同サービスで管理することができる。
梶原氏は同サービスの特徴として「AWS上のマネージドサービスにより提供されるサーバーレスアーキテクチャ」であることを挙げた。クラウド上にサーバを構築しないため、サービスを使わなければまったく料金が発生しないという。また、SIMは安い固定料金と従量課金で提供される「SORACOM Air」をサポートしているため、低コストで利用を開始できるというわけだ。さらに、AWSを利用しているため、利用量が増えても容易に拡張することが可能だ。
同サービスのユースケースとしては、「中小製造業や卸売り業の配送管理」と「長距離バスのための運行情報の公開」があるという。
最後に、スカイディスクのCOOを務める金田一平氏が話をした。同社はIoTセンサーデバイスの開発、IoT分野別サービスの提供、IoT分析・AIクラウドの構築などを行っている。
金田氏は同社のサービスの特徴について「センサーデバイス、通信デバイス、AI/クラウド、アプリケーションをワンストップで提供していること。国内でこれらすべてを提供しているのはわれわれだけと自負している」と語った。
同社のセンサーは脱着式であるため他分野での応用が容易であり、通信モジュールとBody Coreを共用しているためコストが抑えられているという。そして、IoTプラットフォームのセンサーデータの蓄積・分析・AIをAWSで構築している。「将来、数十万のデバイスのデータを蓄積・分析することを見据えて、AWSを選んだ」と金田氏。
このようにワンストップでSIではなくパッケージ化して提供される同社のサービスは「デバイス(センサー、通信)が高価」「システムが大規模、複雑、高価」「導入に時間がかかる」といった、IoTサービスの導入を阻害する要因を解消するという。
今後、中小企業向けのIoTサービスについては、中小工場向けの余地保全をパッケージ化し、月額課金モデルによって導入しやすさを実現していく。