『逃げるは恥だが役に立つ』『THE LAST COP/ラストコップ』『レンタル救世主』…現在放送されている秋ドラマだが、この3作品の共通点をご存知だろうか。実は、すべて横浜を舞台にした作品で、どれも横浜市が撮影協力に入っている。
これまでも、横浜を舞台にした作品はあったが、同市の協力するドラマが同時期に3作品も放送されるのは初めてとのこと。撮影現場の"横浜人気"の秘密を探った――。
『逃げるは恥だが役に立つ』タイトルバックにも登場する横浜・みなとみらい地区(上段)、『THE LAST COP/ラストコップ』横浜中央警察署として登場する神奈川県庁本庁舎(下段左)、『レンタル救世主』の事務所として登場する元町パセオ(下段右) |
好ロケーション・撮影のしやすさなどに評価
『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、毎週火曜22:00~22:54)は、夫=雇用主、妻=従業員となる"就職"という意味での男女の結婚生活を描く、新垣結衣主演のラブコメディ。視聴率は初回から右肩上がりが続く好調ぶりで、エンディングで見せるキャスト陣のダンスも話題だ。
横浜を舞台にした作品ということで、オープニングのタイトルバックでも、みなとみらい地区が映し出されている同作に、横浜市は「特別協力」としてクレジット。この一環として、定番デートスポットを紹介した「横浜逃げ恥(ニゲハジ)MAP」を作成・配布しているほか、横浜限定の番組ポスターを撮影して応募するプレゼントキャンペーンも実施している。
『THE LAST COP/ラストコップ』(日本テレビ系、毎週土曜21:00~21:54)は、唐沢寿明演じる破天荒な熱血刑事と、窪田正孝演じる草食系若手刑事がコンビを組むアクションコメディで、唐沢の「横浜の街は俺が守る!」が決めゼリフ。
『レンタル救世主』(同局系、毎週日曜22:30~23:25)は、沢村一樹演じるダメ男が、救世主として危機を解決するストーリーで、沢村はドラマを飛び出し、市民音楽フェス「ヨコオト・ライブ」でチケットのもぎりをお手伝いして"救世主"ぶりを見せた。
これまでも、横浜を舞台にした作品は多く、市も多くの作品で撮影協力をしてきたが、同クールに3作品も集中するのは初めて。その理由を横浜市に聞くと、ロケーションの良さ、東京から日帰りで撮影できる点、そして、撮影のしやすさという、3つを挙げた。
ロケーションの良さは、美しい港の風景・夜景(みなとみらい地区など)や、多くの歴史的な建造物(関内地区など)、そして路地を一本入るだけで寂れた街並み(野毛地区など)も撮影できるスポットが、狭い範囲に固まっているということ。画になるロケーションは、サザンオールスターズやゆずなど、名曲の歌詞に横浜の実在スポットが多数登場することからもお墨付きで、それが都内から近距離に位置することが魅力的のようだ。
具体的な撮影のしやすさとは、撮影するにあたって必要な許可を取る相手を横浜市がアドバイスしたり、許可が難しそうな場合は市が同行して説得したりする場合もあるという。撮影時には職員が必ず立ち会うといい、今クールの場合は、TBSと日テレに対して同時期に協力に入ることを事前に伝えておくことで、ドラマ制作サイドとの信頼関係にも努めている。
日テレのドラマに主演する唐沢と沢村は、10月3日に横浜市の林文子市長を表敬訪問。唐沢は「横浜市のご協力のおかげでとてもスムーズな撮影を行えていますし、僕たちも安心して演じることができています」と市の調整力に感謝し、沢村は「横浜市はきれいな景色から、中華街、ヨットハーバー、倉庫などいろんな景観があり、その中で演じられることはとても刺激的です」とロケーションの良さを絶賛していた。
大野智効果で売れ残ったぬいぐるみの在庫が…
他の地方都市でも、ドラマや映画の撮影誘致を行っているが、多くは助成金を出すケースであるのに対し、横浜市は助成金を使った誘致活動は一切していないという。それでも、横浜を舞台にした作品が増えている理由を、横浜市文化観光局横浜プロモーション担当課長の永井由香氏は「これまで丁寧に行ってきた撮影支援に対する実績が、かなり大きいと考えています」と分析する。
近年では、綾瀬はるか主演の『きょうは会社休みます。』(2014年、日テレ系)が、横浜を舞台に撮影。そこでのスタッフの評判が良く、同じチームで制作された嵐・大野智主演の『世界一難しい恋』(2016年、同局系)も、全編横浜を舞台にして描かれることになった。
『世界一難しい恋』の場合は、横浜を舞台にすることが早くから決まっていたことから、プロモーション活動を共同で展開。完成披露会見を横浜美術館で開催し、放送期間中には赤レンガ倉庫に"初恋成就神社"を期間限定でオープンして、キャスト陣が登場するイベントを行った。また、現在『逃げ恥』で展開しているデートスポットマップや、限定ポスターのキャンペーンも実施した。
ドラマの効果は絶大で、マップは3万部作成するもすぐに無くなり、最終的には8万部まで増刷。劇中で大野が着ぐるみをかぶった横浜市中区のゆるキャラ・スウィンギーは、長年売れ残っていたぬいぐるみの在庫が、放送後あっという間に売り切れとなったそうだ。日テレ側も、同作のプロモーションを評価したことから、唐沢&沢村の市長訪問などにつながったそうで、永井氏は「良い相乗効果が続いている」と手応えを語っている。
現在放送されている3作品は、いずれも作品のジャンルが異なるため、永井氏は「横浜の街をいろんな表情で映していただいているので、われわれも楽しく拝見させていただいています」と満足の様子。『ラストコップ』については、来年のゴールデンウィークに映画版が公開されることが決まっており、「日テレさんと、また盛り上げていこうという話をしています」と、プロモーション活動を仕掛けていくことを示唆している。