2005年に初代NSXが生産終了となってから約11年。長いインターバルを経て2代目NSXが発売されたのだが、実はもっと前に登場するはずだった幻の2代目NSXが存在するのをご存知の人もいるだろう。ちょうど初代NSXが生産終了を迎えた頃にプロジェクトが進行中であることが明らかにされた、「HSV-010」である。
開発の最終段階で発売中止に
当時、開発の最終段階にあったのは紛れもない事実のようだ。ところが、2008年のリーマンショックを受けて、本田技研工業(ホンダ)は市販化を断念。ただし、HSVの名の付く車両は、2010年からスーパーGTという国内トップカテゴリーのツーリングカーレースに出走した。
結局、HSVの市販化は見送られたまま完全に白紙となったわけだが、ホンダとしては、すでに次なるNSXを考え始めていた。
車名が示すNSXの存在意義
さて、NSXという車名には、N=NEW、S=SPORT、X=EXPERIENCEという意味が込められている。それはすなわち、ホンダが考えるスーパースポーツの新たな走りの喜びを提案するクルマである。
初代NSXが世に出た当時、フェラーリなどのスーパースポーツといえば、もっと乗り手を選ぶ敷居の高いものだった。ところが、NSXは扱いやすく快適かつ安全で、ドライバーの意志に素直に応答するという、「人間中心」とホンダが表現する新しい領域を目指した。それが世に出るや世界中で高く評価された。
市販化の実現しなかったHSVで特徴的だったのは、エンジンの搭載位置が初代のようにコクピット後方ではなく、フロントミッドシップとされていたこと。動力源にはホンダ第3期F1を象徴するV10エンジンを用意するなど、当時の時代背景を反映したスーパースポーツとなるはずだった。