第29回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが3日、東京・EXシアター六本木で行われ、最高賞である東京グランプリにクリス・クラウス監督によるドイツ=オーストリア合作映画『ブルーム・オヴ・イエスタディ』が輝いた。
東京グランプリの発表は、審査委員長を務めたジャン=ジャック・ベネックス監督が担当。「映画はそのときの悲劇の瞬間を描写しますが、年々にそのイメージが薄れ、思い出も消えてしまいます。卓越した映画作りとは、それを越えて過去の罪を正しい視点でまた伝えるというもの」とした上で、『ブルーム・オヴ・イエスタディ』と作品名を発表した。
クリス・クラウス監督は、ベネックス監督からトロフィーを、そして、プレゼンターとして登場した小池百合子東京都知事から表彰状と麒麟像を受け取ると、それらを高々と掲げて喜びを爆発。「非現実的でシュールな気分です。特に、19、20歳のころにベネックス監督の映画を見ていたので、同じ舞台に立てて夢がかなったような気持ちです」と興奮気味に話した。
同作は、ホロコーストというヘヴィーな題材を、ユーモアや恋愛を交えて描いた作品。クラウス監督は「この映画をつくることは簡単ではなかったので、本当に感動しています」と感慨深げに語り、「この賞によって、これからドイツやフランス、日本でも公開されることを期待します」と願った。
なお、今年のコンペティション部門ノミネート作品は、98の国と地域の応募の中から選ばれた16作品。日本からは蒼井優主演の『アズミ・ハルコは行方不明』、杉野希妃が監督・主演を務める『雪女』の2作品がノミネートされていたが、受賞はならなかった。
第29回東京国際映画祭 受賞作品・受賞者
【コンペティション部門】
東京グランプリ/東京都知事賞:『ブルーム・オヴ・イエスタディ』
審査員特別賞:『サーミ・ブラッド』
最優秀監督賞:ハナ・ユシッチ(『私に構わないで』)
最優秀女優賞:レーネ=セシリア・スパルロク(『サーミ・ブラッド』)
最優秀男優賞:パオロ・バレステロス(『ダイ・ビューティフル』)
最優秀芸術貢献賞:『ミスター・ノー・プロブレム』
観客賞:『ダイ・ビューティフル』
WOWOW賞:『ブルーム・オヴ・イエスタディ』
【アジアの未来】
作品賞:『バードショット』
国際交流基金アジアセンター 特別賞:アランクリター・シュリーワースタウ(『ブルガの中の口紅』)
【日本映画スプラッシュ】
作品賞:『プールサイドマン』
【ARIGATO(ありがとう)賞】
新海誠、高畑充希、妻夫木聡、ゴジラ
【SAMURAI(サムライ)賞】
黒沢清、マーティン・スコセッシ