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トランス脂肪酸が体によくない? そんなニュースが飛び交いましたが、トランス脂肪酸とはそもそもどんなものなのでしょうか。そして妊婦さんへの影響は? 今回は、En女医会の産婦人科専門医・間瀬有里先生にお聞きしました。
トランス脂肪酸とは?
ーートランス脂肪酸とはどんなものなのでしょうか
"あぶら"には、常温で液体になる「油」と常温で固形の状態を保つ「脂」があり、これらは脂肪酸とグリセリンという物質でできています。脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類に分けられます。さらに、その不飽和脂肪酸のなかに、シス型とトランス型があるのです。天然の不飽和脂肪酸のほとんどがシス型ですが、問題になっているのはトランス脂肪酸のほうです。
ーートランス脂肪酸はどんな食品に含まれているのですか
トランス脂肪酸は、天然の食品のなかにも含まれています。通常は、天然の食品はシス型です。しかし、牛や羊などは食べたものを何度も反芻して消化する過程でトランス脂肪酸を体内で作ります。ですので、牛肉、羊肉、牛乳など乳製品にはそれが微量に含まれています。ただ、これらは非常に微量なのであまり心配する必要はありません。
問題なのは、油脂の加工・精製の過程である水素添加により、トランス脂肪酸が作られる点なのです。
ーー人工的に作られてしまうのですか?
そうです。常温では液体の状態である油を、反固形、固形の油脂に作り替える過程で、できてしまうのです。マーガリンやショートニングが代表的なもので、それらを使ったパンやケーキにも含まれます。
とりすぎるとどうしていけないの?
ーートランス脂肪酸をとり過ぎるとなにがいけないのですか?
血中のLDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールが増加して、善玉コレステロールが減ります。それにより、心臓病のリスクが高まると言われています。
ーー脂質自体はとる必要があるものですよね?
そうです。三大栄養素のひとつで、体を動かすエネルギーになるものですから。とらなすぎるのも、とりすぎるのも危険なので、バランスよく摂取する必要があります。
妊婦さんが注意すべきことは?
ーー妊婦さんがトランス脂肪酸をとりすぎると、どのような悪影響があるのでしょうか
たとえば胎盤は、血管のかたまりと言っても過言ではない器官です。トランス脂肪酸のように全身の血管に悪影響を及ぼすことがわかっているものを過剰摂取するということは、もちろん胎盤にも良くないです。
また、ただでさえ妊娠中は糖尿傾向になりやすいです。トランス脂肪酸をとりすぎると糖尿病のリスクが高まるというデータも出ています。子宮内膜症や不妊症の発症の危険性も高まると報告されています。さらに男性は、トランス脂肪酸の過剰摂取により、著しく精子の濃度が下がるとも言われています。
ーー極力トランス脂肪酸を摂らないようにすべきですね?
そうですね。妊娠していなくても、そう心がけるべきものです。食品の成分は表示義務があるので、油脂系のものを購入する際には注意して見た方がいいです。
しかし、天然の食品から微量とってしまうことに関しては、(妊娠後の合併症などがなければ)あまり神経質になる必要はないと思います。神経質になり過ぎることがストレスにつながってしまいますから。
ーーありがとうございました!
■プロフィール
間瀬有里
2003年 日本医科大学卒業。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加するEn女医会に所属している(En女医会とは、会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用し、医療分野での啓発活動を積極的に行っている団体)。
産婦人科専門医、指導医。医学博士。大学病院助教を経て、現在、東京ミッドタウンクリニック勤務。長年の大学病院勤務経験を生かし、現在は健診業務から一般外来診療まで幅広く対応している。二児の母としても、日々奮闘中。