地域の人口減を抑制する目的から、日本全国の自治体で移住・定住を促進する様々な取り組みが行われています。その一例として、新しく住宅を建てる場合や住宅を改修・改築する場合に助成金を受け取ることができる制度があります。前回は家賃助成制度についてご紹介しましたが、今回はこうした住宅助成制度を東京23区内でピックアップしてみたいと思います。

親と一緒に住みたい方は三世代住宅を建てるとお得!

最初に、住宅を区内に新しく建築する際の助成から見ていきましょう。

北区の「三世代住宅建設助成」では、親・子・孫の三世代世帯が居住する住宅を建てる方に対して1戸につき50万円の助成金が支払われます。条件としては、高齢者に配慮した住宅の設備(室内に段差がない、手すりを設置しているなど)を備えている必要があるほか、部屋の面積や居室の数に関しても満たすべき項目があります。さらに、親世帯が区内に既に10年以上住んでいる場合、中古マンションあるいは戸建てを購入して新たに転入することで、20万円を上限に補助を受けられる「親元近居助成」の制度もあります。

同じく台東区でも「三世代住宅助成」を行っています。こちらは助成金額が120万円ですが1年に12件程度と件数に制限を設けています。 また見逃せないのが、地震や火災に強い構造の住宅を建てた際にもらえる「安心助成(台東区住まいの共同化と安心建替え支援)」です。建築基準法の規定よりも耐火性能を向上させた住宅(準耐火構造の規定の場合に耐火構造で建築するなど)に対して120万円または240万円が給付されます。こちらも予定件数が定められているので、検討している場合は受付開始後なるべく早めに申請することをオススメします。

千代田区の「次世代育成住宅助成」では、親元近居助成・区内転居助成の二つによって定住の推進が図られています。期間は最長8年間または末子が18歳に達する年度までで、金額は世帯人数に応じて6,000円~8万円となっており、年間所得に関して制限が設けられています。

基本的には、単に住宅を建てれば補助を受けられるというのではなく、三世代住宅や親元への近居といった要件を満たさなければいけないことに注意してください。

住宅建築に関わる助成(一例)

バリアフリー化・耐震化を促進、取り壊し費用への補助も

次に、区内の住宅を改修または改築する際の助成です。

まず多くの区が実施しているのが、高齢者や障がいのある方の生活の利便や安全を確保するために住宅をバリアフリー化する方に対する助成です。中央区では「住宅設備改善給付」として、浴槽や流し・洗面台などの設備を改修する予定の「要支援」「要介護」の認定を受けている方に対して、経費の10%または20%を目安に助成を行っています。

足立区の「住宅設備改善費の給付」制度では、学齢児以上65歳未満の障がいのある方で条件を満たしていれば、小規模改修で20万円、中規模改修で64万1,000円の給付が受けられます。更に渋谷区では、「住宅簡易改修工事費助成」として、住宅の改修工事を実施する区民に工事費用の20%(上限10万円)を補助しています。こちらは申請の際に特別な要件はありません。

また、住宅の耐震補強のための工事に対して助成を行っている自治体もあります。練馬区の「戸建住宅の耐震改修工事等の助成」では、昭和56年(1981年)5月以前に建築された、現在の耐震基準を満たさない住宅を改修する際に、耐震診断・実施設計・耐震改修工事にかかるそれぞれの費用の3分の2を上限付きで補助しています。通常は耐震改修工事の費用の上限が100万円ですが、世帯所得が一定以下であれば120万円まで助成を受けることができます。

さらに荒川区内の老朽住宅を除却して建て替えなどを行う場合は、「住宅建替え資金融資あっ旋事業」を利用すると、住宅の取得に必要な資金の融資をあっ旋し、利子の一部を補給してもらえます。住宅の防火性の向上を促進する制度なので、耐火建築物(準耐火建築物を含む)の住宅への建て替えに限られますが、2,000万円を上限に融資のあっ旋を受けることができるので、住宅の取り壊しを予定している方は資格・要件を満たしているかどうか確認してみてはいかがでしょうか。

改築・改修に関わる助成(一例)

23区では、「親世帯と近くに住みたい」「地震に強い家を持ちたい」など多種多様な要望に合わせた住宅助成制度が充実しています。申請の期間や手続きの流れをよくチェックして、理想のマイホームを手に入れる際にはもらい漏れのないようにしましょう。

株式会社回遊舎


"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。