米Microsoftは10月26日、「Microsoft Windows 10 event」を開催した。例年どおり多くの情報が発表されたが、まずは「Windows 10 Creators Update」の正式発表から確認したい。
Windows 10 Creators Updateの概要
Windows 10 Creators Updateは、"3D for everyone" をキーワードに、往年の「ペイント」を3D対応させた「3D Paint」や「Windows Holographic」のサポートなど、「すべて3D化」を意識した改善を加えるという。
「Microsoft HoloLens」と「Windows Holographic」機能を使って、3Dホログラムを現実世界に映し出すデモンストレーションも披露。先ほどPaint 3Dで作成した3Dオブジェクトを利用している |
筆者が強く興味を持ったのが「MyPeople」である。こちらはWindows 10 Insider Previewdでも公開していない新機能だ。MyPeopleでは、Windows 10のタスクバーに特定の相手がアイコンとしてピン留めされる。そのアイコンへファイルなどをドラッグ&ドロップすると、メールやSkype経由で送信できる。アイコンをクリックすると現れるフライアウトから、Peopleなどのコミュニケーション系アプリケーションを呼び出すことも可能だ。
先頃リリースされたWindows 10 Insider Preview OSビルド14951の「フォト」では、画像や動画にペンで描き込んだデータの送信をMyPeopleを通じて行えることから、MyPeopleはフレームワークとして実装するのだろう。
大方の予想どおり、RedStone 2改めWindows 10 Creators Updateは、2017年3月のローンチを予定している。
クリエイター向けの一体型PC「Surface Studio」
発表前からAiO (All-in-One) 型Surfaceの登場が予想されていたが、「Surface Studio」は順当な部分と意外性を備えるデバイスだった。28インチのディスプレイ部分は12.5mmの薄さ。解像度は4,500×3,000ピクセル、1100:1のコントラスト比を持ち、デバイス名どおりクリエイター向けであることを強くアピールする。
個人的に興味深いのは、実際の印刷物とディスプレイの表示内容が同等になる「True Scale」だ。「画面上の1インチと生活の中にある1インチは同じ」であることは、Windowsが長年目指しつつも不得手としてきたWYSIWYGを実現することになるため、PC上で印刷物を作成するクリエイターには大きな価値となる。
価格と構成については次の通り。米Microsoftstore.comでは先行予約を受け付けている。
- Intel Core i5-6440HQ / 8GB RAM / NVIDIA GeForce GTX 965M 2GB / 1TB Hybrid drive / 2,999ドル
- Intel Core i7-6820HQ / 16GB RAM / NVIDIA GeForce GTX 965M 2GB / 1TB Hybrid drive / 3,499ドル
- Intel Core i7-6820HQ / 32GB RAM / NVIDIA GeForce GTX 980M 4GB / 2TB Hybrid drive / 4,199ドル
ディスプレイは非常に魅力的だが、CPUは第6世代のIntel Core、GPUはノートPC向けのものを搭載しており、本体まわりのスペックは最強レベルではない。これはMicrosoftがVR (仮想現実) やMR (拡張現実) ではなく、既存のクリエイターをターゲットにするという意思の表れなのだろう。それとシンクロするように、次期大型アップデートも「Windows 10 Creators Update」という呼称を採用している。
さらに、Surface Proシリーズで強調していた「他のPCベンダーが進出していない領域で、新しい価値を提案」するものとは言い難い。すでに、VAIO Z Canvasやワコム Cintiq 27QHDのような製品が存在しているからだ。Surface Proシリーズで2-in-1 PC市場を生み出したMicrosoftは、Surface Studioで何を生み出すのか注視したい。
阿久津良和(Cactus)