能年玲奈から改名した女優・のんが28日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた第29回東京国際映画祭の特別招待部門出品作『この世界の片隅に』(11月12日公開)の舞台挨拶に、片渕須直監督と共に出席した。

『この世界の片隅に』舞台挨拶に登壇したのん

同作は、こうの史代の同名コミックを原作とするアニメーション映画。戦時中、広島・呉に嫁いだ主人公・すず(のん)と、夫の周作(細谷佳正)を取り巻く人間関係と戦時下での生活、悲劇と再生を描いていく。

主演声優に初挑戦したのんは、「すずさん役をやらせていただいた、のんです! えー、今日は…よろしくお願いします!」と最初のあいさつからマイペースな話口調。あるシーンを説明する時に言葉がなかなか出ず、監督がフォローして笑いが起こる場面もあったが、自分の言葉で一生懸命、役作りや作品の魅力を伝えた。

演じたすずについては、「あからさまに戦争に嫌悪感を示している人ではないのかなと思った」と話し、「それよりも目の前にある毎日の暮らしを一生懸命にいきるっていう部分を意識しました」と演じる上で気をつけたことを振り返った。

そして、「普通に日々を送る、どんなことがあっても毎日がめぐってくるという、普通がすごく愛おしくなる作品」とアピール。「生きるということに涙があふれてくる…涙が悲しいものではなく、何があっても生活を続けるという力強さに心が震える映画だと思います」と作品の魅力を伝えた。

監督は、「(戦争の時代を)単純に想像するのではなく、この時代はこんな時代だったんだなと確かな手ごたえを感じたくてこの映画を作りました」と映画化を決めた思いを告白。のんの演技について、広島弁をしっかりものにし、「最もナチュラルに存在しているすずさんを演じることができて、彼女のことが誇らしい」と絶賛すると、のんは隣で恐縮していた。