大阪のビジネス街・本町から地下鉄でひと駅の阿波座駅のすぐ近くに、本格中華とイタリアンが1つのお店で楽しめるお店「テンシンランラン」(大阪市西区)がある。人気の石釜料理を中心に、中華とイタリアンそれぞれの人気メニューを紹介しよう。
石釜は料理の幅を広げてくれる
中華とイタリアンのメニューを提供するには、両方の料理に精通したシェフが必要だ。オーナーシェフの岡田源貴さんは、「テンシンランラン」をオープンするまでに、日本各地の店で修行を重ねてきたという。
「2016年5月のオープンまで、中華料理店で約8年、イタリア料理店で約3年働きました。最初は中華料理店を始めるつもりで場所を探していたのですが、偶然、石釜付きのこの場所を見つけたんです。それで、石釜を使って中華料理とイタリアンの両方を提供する今のスタイルで出店しようと決めました」。
通常のコンロでは200度少々の加熱しかできないが、石釜なら400度以上の加熱ができる。それだけで料理の幅がグンと広がるのだそう。
「石釜は、ピッツァなどを『焼く』のが有名ですよね。実際にカリッと香ばしく焼き上げます。しかしながら、石釜はグラタンや鍋を『煮る』ことや、作った料理を『保温する』こともできるんですよ。石釜があれば提供できるメニューの幅が広がると考えて、中華料理とイタリアンの両方を提供することしたんです」。
ピッツァは専門店で修行し、生地を手で延ばす技術を習得
名物メニューの1つである、石釜で焼くナポリピッツァは、マルゲリータ、クワトロ、ビスマルク、辛肉味噌の4種類があり、いずれも1,069円とリーズナブル。岡田さんは「テンシンランラン」のオープンにあたり、有名ピッツァ専門店で生地や製法について修行させてもらったそう。
「以前働いていた店でもピッツァ作りの経験はありますが、麺棒を使って生地を延ばす方法でしか作ったことがなかったんです。自分の店では生地を手で延ばし、生地そのものも自分が理想とするモチモチ感を出したかった。そこでピッツァ専門店で修行し、手で延ばす方法や石釜の温度管理、生地の配合などを学びました」。
実は「テンシンランラン」のピッツァでは、モチモチ感を出すために生イーストを使っている。保管や温度コントールの難しさから、ピッツァ専門店でもほとんど使っている店はないそう。しかし岡田さんは、生イーストならではの膨らみの良さやモチモチ感を提供したくて生イーストにこだわっている。
「やはり生イーストを使った生地を手で延ばして作ったピッツァは、抜群においしいんです。特に、ソースとチーズが掛かっていない外周の部分をじっくり味わってほしいですね。生地だけでもワインのアテとしても十分イケますから(笑)」。
石釜ならではの特製チャーシュー
一方、中華料理の人気メニューの1つが、特製チャーシュー(637円)だ。通常、ラーメンのチャーシューはつけダレでつけ込むのが一般的。しかし『テンシンランラン』の特製チャーシューはつけ込まず、石釜の特徴を最大限に引き出す料理法を採用している。
「特製のタレを塗りつけ、石釜で焼いています。石釜は高温なので、表面は香ばしくカリッと、中はやさしく火が通って柔らかく焼き上がるんです。さらに脂身が少ない肩ロースを使用しているのであっさりしており、たくさん食べていただけます」。
もちろん、石釜を使わないメニューも絶品ぞろいだ。例えば看板メニューの麻婆豆腐(637円)。唐辛子ではなく、山椒のぴりぴりとした辛さと少し甘めの肉味噌のハーモニーがクセになる。
「調味料は、肉味噌を作る時に甜麺醤(テンメンジャン)だけを使っています。甜麺醤だけだと手間が掛かるのですが、その手間を惜しまないことで、コクのある甘さをまとった肉味噌に仕上げています。また、麻婆豆腐なのに豆腐と肉味噌の量があまり変わらないほど肉味噌をたっぷり使っているので、食べ応えもかなりありますよ(笑)」。
そしてもう1つの名物メニューである点心(各種3個入り421円)も、小籠包を除いてすべて自家製。
「こちらも皮がモチモチしているのが特徴ですね。小籠包が自家製じゃないのは、非常に手間が掛かる小籠包を1人で仕込むのは時間的に無理だからなんです。でも、いずれは小籠包も自家製でやりたいと思っています」。
点心は、希望すれば1個ずつ別の種類にしたり、人数に応じて個数を増やすこともできる。そうしたフレキシブルな対応も「テンシンランラン」の特徴だ。
中華とイタリアンを融合した創作メニューにも挑戦!
石釜との出会いから、ワンストップで中華とイタリアンを楽しめる『テンシンランラン』を作り上げた岡田さん。今後の展開についてうかがった。
「中華とイタリアンを融合した新しいメニューを開発していきたいです。今もアヒージョにXO醤を使ったり、中華料理の肉味噌をトッピングしたピッツァなどの融合メニューがありますが、他にも作ってみたいメニューがたくさんあります。それに加えて、石釜を使ったメニューも増やしていきたいですね」。
中華とイタリアンの融合に石釜が加われば、ここだけで味わえる新メニューの誕生も遠くないだろう。
「変わらない部分も大切にしたいです。例えば、できるだけ気軽に来てもらえる価格を守りたいですし、店の雰囲気も、かしこまって食べるよりも、皆でワイワイ言いながら楽しんで食べられる空間であり続けたい。料理が進化しても、そうした部分は今の『テンシンランラン』であり続けたいですね」。
本町から少し足を伸ばして、ぜひワンストップで絶品の中華料理とイタリアンを堪能する体験をしてほしい。
●information
テンシンランラン
大阪府大阪市西区立売堀4-7-8 阿波座ドリームマンション1F
アクセス: 地下鉄中央線「阿波座」駅4番出口から南へ徒歩2分
営業時間: 11時30分~14時(ランチは平日のみ)、17時30分~24時(金・土曜日は17時~翌2時、祝日&祝前日は17時30分~24時)
定休日: 日曜日(祝日は不定休)
※価格は全て税込。記事中の情報・価格は2016年10月取材時のもの
筆者プロフィール: 中 直照(なか なおてる)
大阪出身のコピーライター。出版社や中堅ゼネコンなどを経てフリーライターとして独立。その後、2011年にショートカプチーノ設立。コピーライターとして経営者インタビューや企業広報誌、店舗取材など、幅広く執筆。ほかにもホームページ用コンテンツの企画や制作などにも携わっている。