さまざまなトレンドに対応したアプリケーション戦略が必要

再登壇したWilson氏は、トレンドが変化して行く中、アプリケーションがどのように成長し、変化するのを理解した上でのアプリケーション戦略が必要になると指摘。WindowsアプリだけでなくモバイルアプリやWebアプリ、APIを持つサービス、ウェアラブル端末などIT部門は多くのトレンドに対応する必要がある。これらに対応する際の課題の1つがセキュリティだ。さらに、どのようにID管理を行うかという課題もある。

IT部門が対応すべきさまざまなトレンドと課題

そして、ITとビジネスの生産性を向上させるための新しいコンセプトとして「Workspace IoT」についても語られた。シンプルかつスピーディな業務を実現するアプリとして、消費者向けアプリ、企業向けアプリ、産業向けアプリを紹介した後、企業向け事例としてアメリカの医療機関における例を解説した。

この医療機関では、電子カルテ(EMR)の導入により、医師の負担が増えて生産性が低下するという問題が起きていたという。これを改善するため、患者を訪ねるごとにEMRを起動しログインを行うという作業を、ロケーションサービスを駆使し、医師と患者の場所を把握した上で医師と患者が近づくとEMRの起動とログインを自動化。さらに医療機器をネットワークに接続し、各種データが自動登録されるという形で効率化し、収益向上につなげたそうだ。

Workspace IoT

「私たちはすべてを抜本的に考え直す必要がある。今日ある技術をたたき台にすることはできるが、将来を見据えなければいけない。トレンドをどのように利用し、それぞれのビジネスをどのように変革することができるかを考える必要がある。皆さんの会社の環境を想定して、このようなインパクトがある変革は何か、社員の仕事のあり方やお客さまのあり方を変えるようなシナリオはないか、ぜひ1度考えてみてほしい」と語ったWilson氏は、最後にインテリジェント会議室のソースコードを提示した。

「Workspace IoT」を実現するインテリジェント会議室のソースコード

会議にありがちな、集まった直後の最初の数分はPCを開いたりする準備を無駄であるとし、IoTによって会議室に入った人を検知・識別した上で、入室者の予定表や会議室予約状況を確認。会議の予定があるのならばシステムへのログインや遠隔地の会議相手へのSkype通話接続などとともに、温度や照明の設定も自動で行う。

人は本来の仕事に注力できることで生産性が向上される。予約したのに使われなかった会議室などもすべて把握することで、企業は設備の無駄も是正できるというわけだ。こうしたIoTによる業務効率化を実現できるワークスペースのことを「Workspace IoT」と呼ぶとWilson氏は強調した。

ユーザーとの対話から引き出したニーズを各業界へ展開

シトリックス・システムズ・ジャパン リージョナル バイスプレジデント 村上督氏

午前中最後のセッションとして行われた「日本市場の概況と顧客シナリオ」では、シトリックス・システムズ・ジャパン リージョナル バイスプレジデントである村上督氏が登壇した。

「これまで、お客さまとの対話重視でビジネスを展開してきた。課題を持ったお客さまとセッションを行って一緒にソリューションを探す。その中で、われわれの知見も広がる。結果、3万4000のユーザーを獲得し、各業界を代表するお客さまを得ることができた」と語った村上氏は、ユーザーとの対話で見えてきた日本市場のニーズについても触れた。

第1のニーズとしてセキュリティが挙げられるが、同時にユーザーサイドの利便性も大事にされているという。そして、この両者のバランスを取ることは前提とした上で、少子高齢化時代に対応する在宅勤務を含めた多彩な働き方に対応できるソリューションが求められているとした。

例として、医療分野では電子カルテや医療保険アプリの仮想化による展開、製造業では3D CAD/CAMでの利用に加えてサプライチェーンへの展開といったものが紹介された。教育機関では仮想クラスルームなどのほか、教職員の負荷を低減するためにどこからでも業務を行える環境の実現に需要があるという。

また、金融庁が強くセキュリティに言及していることで、金融業界は特にセキュリティ強化に目が向いている。官公庁や自治体でも電力管理やBCPといった観点での採用例が多い。これらについて具体的な実例なども交えて紹介した村上氏は「お客さまの対応を通してニーズを把握し、各業種ごとに提供していきたい」と講演を結んだ。