化学物質過敏症と呼ばれる病気をご存じだろうか。なにやら耳慣れない言葉かもしれないが、化学物質が関わる疾病だけに、誰もが悩まされる恐れがあるのだ。本稿ではその症状や原因を紹介する。
身近にある化学物質過敏症の原因
化学物質過敏症は「化学物質に大量に接触、または微量でも持続的に接触した後、同じ物質に再接触した場合に起こるさまざまな症状」のこと。その原因は殺虫剤や除草剤などに含まれる化学物質をはじめとして、トルエン、シンナーなどの有機溶剤、防火のためにじゅうたんなどに染みこませてある防炎剤などがある。すなわち、生活のいたる所にその要因があるということになる。
より身近な物で例を挙げると、洗濯に使う柔軟剤や身にまとう香水などに含まれる物質に反応する人もいる。本人の喫煙の有無にかかわらず副流煙を発生させるたばこもまた、大きな影響があるとされている。
自分で避けようとしても周囲の人がこれらのアイテムを使用していたら、症状が出てしまう――。仕事場や学校などで一緒に過ごさざるを得ない状況に置かれていたとしたら、非常にやっかいだ。まだ化学物質過敏症はそれほど知られていないため、周りの理解を得られることが少ない点も問題だ。
化学物質過敏症の症状は多岐にわたる。いくつかの種類に大別でき、その中でも細かな症状があるが、以下に主なものをまとめてみた。
自律神経系
発汗や冷え、めまい、倦怠感など。
気道系
のどの痛みや鼻の痛み、呼吸障害など。
消化器系
下痢や便秘、嘔吐など。
循環器系
動悸や不整脈、高血圧など。
免疫系
皮膚炎やじんましん、喘息、リンパの腫れなど。
泌尿生殖器・婦人疾患系
生理不順や頻尿、尿失禁、膀胱炎など。
更年期やうつと間違えやすい症状も
こうしてみると、たんなる風邪やうつ病と重なる症状が多々ある。普段から「更年期だから」と諦めつつ感じている不定愁訴も、実は化学物質過敏症が原因なのかもしれない。だからこそ診断が難しいと言われており、アレルギーの専門医でもなかなか気づけないことがあるという。
また、「シックハウス症候群」もよく耳にするかもしれないが、化学物質過敏症との違いは前者が特定の化学物質や特定の場所に反応するのに対し、後者は微量でもその原因物質がある所ならどこでも反応すること。シックハウス症候群は家から特定の物質がなくなれば、症状が治まると考えられている。ただ、シックハウス症候群は化学物質過敏症の前段階と呼ばれることもあるため、注意が必要だ。
そして怖いことに、化学物質過敏症になると日光アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症など化学物質以外のアレルギーも併発しやすくなるとのこと。こうなると負のスパイラルに陥ってしまう。
アレルギー対策の第一歩は、自分がどんなアレルゲンに反応するかを知ること。しかし、その原因となる物質が多すぎるため、ある程度範囲を絞ってから検査をしないと検査費用だけで膨大なものになってしまう。そのため、特定の症状が続くことに気づいたら、その日時と場所をメモしておくとよい。自分なりにパターンを分析してから専門医に相談すると診断の手助けになるはずだ。